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輸血の悲劇を繰り返さないために<<8>>
輸血血液の病原体不活化導入へのパラダイム転換
下平 滋隆(信州大学先端細胞治療センター)

2008/04/10

しもだいら しげたか氏○1990年信州大学医学部医学科卒業。2008年信州大学医学部附属病院輸血部准教授、先端細胞治療センター副センター長。輸血・細胞治療、再生療法の開発研究に従事。

 厚生労働省 薬事・食品衛生審議会薬事分科会 血液事業部会において、輸血用血液製剤に対するウイルス感染対策と不活化技術の導入の審議がなされています。安全な血液製剤の安定供給のために、病原体不活化技術の早期導入について提案します。

 2004年に日本赤十字社から出された安全対策8か条の中に、不活化技術の導入が謳われていましたが、実施までには長い時間を要しています。フィブリノゲン製剤等による薬害C型肝炎救済制度が実施され、薬害エイズ事件では、本年3月に元厚生省課長の不作為の過失による有罪が確定しました。参議院予算委員会における田中康夫参議院議員の質問に対して、舛添厚労相、福田総理の回答から不活化導入に向けた検討の督促が出され、輸血用血液製剤の安全性に関して急展開をみせています。

 欧州や東南アジア諸国で実施されている血小板や血漿に対する病原体不活化技術は、米国において承認の動きが加速し、中国や韓国までもが承認間近となっている今日、治験も行われていない日本が大きく遅れてしまったことは明らかです。赤血球の不活化技術は世界的にも臨床試験段階ですが、近い将来、不活化された全ての血液製剤が供給される時代となります。

 国民は輸血血液の安全性にもっと注意を払い、世界で最も安全性の高い輸血血液の供給体制を求めるべきです。過去の忌まわしい歴史すなわち薬害エイズ問題の二の舞は、どうしても避けなければなりません。輸血後肝炎やHIV感染者増加の問題を抱える日本において、有効な病原体不活化技術の導入に向けた議論を深め、早期に国家レベルで検討する必要があるのではないでしょうか。

 安全な血液製剤の安定供給が急務の課題となると同時に、5年先10年先の血液の供給について、安全面と資源の確保という観点から対策を講じる必要に迫られています。日本は他の先進国に比べHIVが急速に拡大しています。このHIV或いは未知のウイルスも含め、更には細菌などのあらゆる病原感染の脅威に対して、想定される全ての病原の汚染を検査するのか、あるいは未知の病原体をも視野に入れた不活化技術の開発や導入を行うのかです。検査法とその精度には限界があり、検査する病原の種類が増加することで諸経費が増大することは明らかです。

 現実的には、病原感染者の増加や予期せぬ事態の際に輸血血液の供給がストップする事態を想定し、今から対応できるように、不活化技術導入による仕組み創りが重要と考えます。全国一斉一律に変更するのではなく、可能な部分から段階的に導入するという柔軟な対応も可能必要ではないでしょうか。

 

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