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慢性胃炎と機能性胃腸症について
小早川雅男 (国立国際医療センター 消化器科)

2008/04/10

こばやかわ まさお氏○1998年 広島大学医学部卒業。日本内科学会認定医、日本消化器病学会専門医。

胃の辺りの症状があったら胃炎なの?
 よく、臍のうえからみぞおち辺りまでの痛みや不快感などの症状があった場合に、「胃が痛い」、「胃炎がある」などと表現することがあります。それは本当に胃が痛かったり、胃炎があったりするのでしょうか。

 医学的にはこの辺りを上腹部と呼んだり、心窩部と言ったりしますので、症状を説明するには「上腹部痛がある」、「心窩部痛がする」と表現するのが正しい言い方ではないかと思います。

 例えば頭が痛い場合に、あなたはどのように表現するでしょうか。「頭痛がする」とは言いますが「脳痛がする」、「脳炎がある」などとは決して言わないと思います。頭の中にある臓器である脳をイメージして、脳自体が痛みを発しているとか、脳に炎症があるなんて普通は考えません。脳炎という病気はありますが頭痛の原因としては極めて稀です。

 ところが、上腹部痛がある場合、多くの人は胃をイメージして「胃が痛い」、「胃炎がある」なんてことを言っているのです。実際に上腹部にある臓器としては、胃以外にも、膵臓、横行結腸(大腸の一部)、胆嚢などがあり、これらの臓器に異常があれば上腹部痛が出現します。

 また、虫垂炎の初期にも上腹部痛が生じます。これは右下腹部で起こった虫垂炎に対し、大網と呼ばれる胃から連続する脂肪組織が虫垂を覆うように移動するからです。その他、心筋梗塞でも上腹部痛として発症することがあます。心臓の痛みを感じる神経が胃の周辺を走行するからと考えられています。このように、上腹部痛がある場合に、それを「胃が痛い」、「胃炎がある」と言ってしまうのは極めてナンセンスであることが判ります。

内視鏡検査で慢性胃炎があると言われました
 しかしながら、上腹部痛があった場合、その原因が胃、十二指腸のことも少なくありません。代表的な疾患としては胃潰瘍、十二指腸潰瘍があります。最近はこれらの疾患は内視鏡検査で診断されることが多くなってきました。内視鏡検査で胃・十二指腸潰瘍がなくても「慢性胃炎」と診断されることもよくあります。

 それでは、この慢性胃炎とはどういった意味なのでしょうか。症状とは関係あるのでしょうか。「慢性」とは長期間持続することを意味します。「胃炎」とは胃に炎症があることを意味します。文字通り解釈すれば「胃に長期に持続する炎症がある」ということになります。

 では実際に胃にこのような炎症があるのでしょうか。結論からいうと、ピロリ菌の感染による組織学的な慢性胃炎というものがあります。ピロリ菌が感染すると顕微鏡で見ると胃粘膜に白血球などの炎症細胞がやってきてこれが長年持続しているのです。
 したがって、慢性胃炎とは胃の組織を顕微鏡で見て炎症細胞の有無を確認し、ピロリ菌の有無を判定することにより確定しますが、熟練した内視鏡医は、内視鏡検査で胃粘膜を観察するだけで慢性胃炎およびピロリ菌の有無についてある程度推測することが出来ます。

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