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医療の法律処方箋―第12回・医療事故調査制度 
法案提出前に法的リスクの告知を
井上清成(弁護士)

2008/04/02

いのうえ きよなり氏○1981年東大法学部卒業。86年に弁護士登録、89年に井上法律事務所を開設。病院顧問、病院代理人を務める傍ら、医療法務に関する講演会、個別病院の研修会、論文執筆などの活動をしている。

1 医療者に法的リスクの説明を
 死因究明制度としての医療事故(安全)調査委員会制度創設の作業が、急ピッチで進んでいる。確かに、医師法21条(異状死届け出制度)の診療関連死への適用の悪弊は、直ちに改めねばならない。この点には医療者に異論がないように思う。患者団体や患者側の代理人を務める弁護士も、医療事故(安全)調査委員会制度創設に賛成している。

 しかしながら、医療者の中には事故調創設反対論も根強い。納得が得られないからである。因みに、事故調創設賛成論の医療者の中にも、事故調の法的リスクを十分に理解していないまま賛成してしまった者も多いらしい。

 制度創設が混迷している大きな原因は、厚生労働省が医療事故(安全)調査委員会制度創設に伴う法的リスクを説明していないことにあるように思う。最近は、厚労省の担当者も各所の会合に出席して制度創設の説明に努めている。しかしながら、それでも制度創設のデメリットやリスクに言及していない。

 医療者にとって重大な意味を持つ制度創設なのだから、メリットだけでなく、デメリットやリスクも十分に説明しなければならないはずである。もし不利益な面を医療者が理解しないままに賛成してしまったとしたら、それは医療者のインフォームドコンセントが得られたことにはならない。

 厚労省が医療者に対して十分に説明すべき、制度創設の法的デメリットないし法的リスクには、どのようなものがあるのか考えてみた。

2 責任追及は目的ではなく機能と結果
 厚労省第二次試案にはなかったが、いずれは試案に「責任追及を目的とするものではない」と明示されるであろう。しかし、明示したからといって、医療者の責任追及が制度の目的ないし意図でなくなるだけである。責任追及の制度として機能するであろうし、制度が責任追及の結果をもたらすであろう。

 そもそも将来に向けての医療安全・再発防止と過去の医療事故の責任追及とは指向性が異なる。安全対策と事故処理対策とでは指向性と共に、方法論も異ならざるを得ない。現在想定されている制度は、事故処理の面が強く打ち出されている。

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