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HIV感染者増加の対応策
下平滋隆(信州大学先端細胞治療センター)

2008/03/25

 現在、日本の輸血患者数は100万人以上。国民の100人に1人は輸血していることになります。たとえば国民の3分の1ががんで亡くなる時代ですが、輸血が最も必要とされるのもがん患者で、輸血血液の45%が使用されています。このように身近な輸血医療の安全性について、昨年来より国民意識が変わってきました。安全な血液製剤の安定供給が急務の課題となると同時に、5年先10年先の血液供給について、安全面と資源の確保という観点から対策を講じる必要に迫られています。

 2007年献血者数は500万人を切る中で、献血者のHIV感染者が増加の一途を辿り(102人、2人/10万)、先進国の中で唯一HIV感染者が増加しています。人口10万人あたりのHIV陽性者(累積)では、第1位が東京都(25.5人)、第2位に茨城県(13.8人)、著者在住の長野県は第3位(10.3人)となっています。増加率の著しい都市部では青年男性(同性間)に多く、地方では中年男性(異性間)が主たる感染者となっています。HIVの感染経路として、女性から男性への感染は1/700~1/3,000、男性から女性へは1/200~1/2,000ですが、性感染症である淋病やクラミジア感染があると男性で10~50倍、女性で50~300倍に感染リスクが高まります。性感染症のある女性では、HIV感染の確率が1に近づくことになります。また、HIV感染者にはB型肝炎(HBV)合併例も多く、HIVの標準的な治療であるHAART(Highlyactive anti-retroviral therapy)に含まれる抗HIV薬のラミブジン(3TC)はHBVの治療に効果があるので、混合感染が表に出ていない可能性もあるのです。

 こうした状況において、日本赤十字社では合理的な運用により、献血者のHIV感染症の1次検査を凝集法から化学発光酵素免疫法(CLEIA法)に6ヶ月の移行期間を経て全面的に変更します。HIVのCLEIA法では感度が高まる分、0.3%の偽陽性があると言われているので、ウイルス陰性なのに血液が不適になる方が0.3%出る計算になります。

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