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気管支炎へのアプローチについて
「気管支炎に抗菌薬は不要だ」とは断言できない
<総括 その4>「第1章 急性咽頭炎」の討論を振り返って

2008/10/14
大曲 貴夫=静岡がんセンター感染症科

 そして今回の討論、3つめに興味深かったのが、「風邪症候群」の話題から派生した、「気管支炎」治療へのアプローチについてだ(討論の内容は「1-1 急性咽頭炎」を参照)。拝読していて、あらためて思ったのは、この種の議論では、「誰を対象に、何を目的に、抗菌薬投与を行うか」ということを明確にする必要があるということだ。

 まず、「気管支炎の治療」を考えるに当たって、その治療目的については、いくつか思い浮かぶだろう。例えば、私が思いつくだけでも、次のようなものが挙げられる。

1)咳を短期間で止める
2)肺炎になるリスクを低くする
3)百日咳など、感染の拡大を防ぐ


 それぞれ、目的のベクトルが全く違うのが分かるはすだ。よって、治療目的の区別が曖昧なままに、漠然と「気管支炎の治療」について議論を展開すれば、これは錯綜してしまうのは明らかだった。

 また、気管支炎の治療を考える上で、極めて重要なことは「患者の背景」である。たとえば、「慢性呼吸器疾患を持つ患者は、別に考えるべき」や「高齢の気管支炎患者の場合には、肺炎のリスクが除外できないので治療すべき」という意見がある。下気道感染症(英文は“chest infection”)の肺炎に対する予防効果は、65歳以上の高齢者において高かった(抗菌薬非投与群の1カ月以内の肺炎の発症率は4%であったが、抗菌薬投与群では1.5%)という報告がある(BMJ 2007; 335: 982)。この論文が吟味される場合には、“chest infection”と括られている疾患群で肺炎がどの程度が除外できているかが問題とされる。

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