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Annals of Surgery誌から
熱傷患者の敗血症診断に有望なマーカー候補は?

2022/05/20
山川 里香=医学記者

 オーストラリア・アルフレッド病院のAndrew T. Li氏らは入院中の熱傷患者の敗血症を早期診断するためのバイオマーカーの診断能を評価し、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-pro-BNP)、1回拍出係数(SVI)、腫瘍壊死因子(TNF)-α、受傷後14日目のセルフリーDNA(cfDNA)が非常に有望であること、バイオマーカー評価法を標準化した上でさらに検証する必要があることを報告した。この結果はAnnals of Surgery誌2022年4月号に掲載された。

 敗血症は熱傷後に発現することの多い合併症(累積発症率8~45%)であり、熱傷患者の主な死因(最高65%)となっている。適切な抗菌薬療法が迅速に施行されるかが最も重要な生存率決定因子であり、早期発見が予後を左右する。しかし、広範な熱傷を負った患者は敗血症に類似した症状(全身性炎症と代謝亢進状態)を呈するため、熱傷患者の敗血症を診断するのは難しい。

 研究者らは2020年2月14日までに発表された英語の研究論文を系統的にレビューし、特定した研究28件のうち基準を満たした10件を採用してメタアナリシスを実施した。しかし、これまで広く検証されてきたバイオマーカーの統合後の診断能は低く、プロカルシトニン(PCT)の感度73%(95%信頼区間:53-87%)、特異度75%(66-82%)は中程度、白血球数(WCC)の感度47%(23-72%)は低く、特異度65%(36-85%)は中程度、CRPの感度86%(70-94%)は高く、特異度54%(43-65%)は低かった。

 メタアナリシスに採用できたバイオマーカーのうち全体的な診断能が最も高かったのはPCTだが、それでも敗血症を確実に診断/除外するには不十分だった。しかも、メタアナリシスに採用可能な研究が少なく、対象者集団、敗血症の定義、検査閾値に中等度~高度の不均一性があったため、根拠となるエビデンスは限定的だ。

 研究者らの知る限り、PCTは熱傷患者を対象としたメタアナリシスで評価されたことのある唯一のバイオマーカーだ。今回のメタアナリシスで統合後の感度(73%)は既報のメタアナリシス2件の結果とほぼ同じだったが、特異度(75%)は既報2件の結果の中間だった。今回のメタアナリシスは新規研究を採用した点が異なるだけでなく、一次研究採用基準および統合後の診断精度を算出するための統計学的手法が既報の研究とは異なっていたため、結果の不一致につながった可能性があると研究者らは説明している。

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