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11月22~28日の話題になった論文
ワクチン投与後の心筋炎や血栓症にAb2抗体が関連している?

2021/12/07

 本コラムでは、Googleが提供する学術雑誌のインパクト指標「h5-index」から、各領域10誌を抽出。それを元に世界中で最も多くツイートされた論文を紹介する。

 11月22~28日に最もツイート数が多かったのは、NEJM誌のコラム「 Clinical Implications of Basic Research」(基礎研究の臨床的意義)シリーズに掲載された解説記事「A Possible Role for Anti-idiotype Antibodies in SARS-CoV-2 Infection and Vaccination」(SARS-CoV-2感染とワクチン接種における抗イディオタイプ抗体が果たす役割の可能性)で3106件だった。

 生体内に細菌やウイルスなど非自己の物質が侵入すると、免疫系がそれを抗原と認識して抗体ができる(Ab1抗体と呼ばれる)。できたAb1抗体の可変部を認識して新たに産生される抗体が抗イディオタイプ抗体(Ab2抗体とも呼ばれる)だ。SARS-CoV-2ワクチンに関連する現象のいくつかは、この抗イディオタイプ抗体が関連している可能性がある。例えば、ワクチン投与後に心筋炎の発症率増加が観察されているが、これは特定のウイルス感染後に誘発されるAb2抗体に関連する心筋炎との類似性が指摘されている。またワクチン接種後の血栓症イベントは、自己免疫性ヘパリン起因性血小板減少症とよく似たメカニズムで、血小板第4因子と抗イディオタイプ抗体が血小板を活性化するために血栓ができると考えられている。

 今後はさらなる研究で、SARS-CoV-2の感染機構とそれを防ぐワクチンの両面から、体液性および細胞媒介性応答に対するイディオタイプベースの免疫制御が、抗ウイルス効果と好ましくない副作用の両方に果たす役割を明らかにすることが望ましいと結論している。


 今回注目した論文は外科領域でツイート数の多かった「Factors affecting short-term survival in patients older than 85 treated with resection for stage II and III colon cancer」(ステージIIやIIIの大腸癌切除を行った85歳以上の患者の短期生存に影響を与える要因)だ。大腸癌は85歳以上の高齢者にも高頻度で見つかり、予後は不良なことが多い。手術や治療によって、生存期間の延長やQOLの改善といったメリットが期待できるのか、負荷が大きすぎて死期を早める結果につながるのか、判断が難しい症例も少なくない。そこでこの研究では、大腸癌の手術を受けた85歳以上の患者データを調べ、90日死亡率に関連する要因に何があるかと、アウトカムの改善につながる修正可能な要因があるかを調べている。

 この研究には米国ニューヨーク州の癌登録データを利用した。対象は、2004~12年の間にステージIIおよびIIIの大腸癌に対して切除術を受けた85歳以上の患者。待機的手術を受けた患者と、非待機的な手術を受けた患者を層別化して、90日死亡率に関連する因子について回帰分析を行った。

 期間中に3779人の高齢大腸癌患者が手術を受けていた。このうち79.9%が開腹手術を受け、48.4%は非待機的な開腹手術であり、90日生存率は83.2%だった。死亡率の増加と関連が見られた要因は、非待機的手術でオッズ比3.81(95%信頼区間3.03-4.89)だった。逆に死亡率の低下と関連が見られた要因は、低侵襲手術で患者全体でのオッズ比は0.50(0.36-0.73)、非待機的手術群でもオッズ比0.35(0.21-0.58)だった。他の医療施設への退院も死亡率の低下と関連が見られ、オッズ比0.42(0.33-0.53)だった。なお、外科医の年間手術件数が多いことは、待機的手術と非待機的手術のどちらでも、死亡率の減少と関連が見られた。

 これらの結果から著者らは、死亡率の減少に関連していたのは、待機的手術と低侵襲手術だったため、術前に患者の状態を評価して、緊急の開腹手術が必要な事態を減らすことがアウトカムの改善につながりそうだと結論している。

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