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11月15~21日の話題になった論文
特発性膜性腎症は生検なしに診断できるか?

2021/11/30

 本コラムでは、Googleが提供する学術雑誌のインパクト指標「h5-index」から、各領域10誌を抽出。それを元に世界中で最も多くツイートされた論文を紹介する。

 11月15~21日に最もツイート数が多かったのは、「Early Convalescent Plasma for High-Risk Outpatients with Covid-19」(回復期血漿は早期に投与しても新型コロナウイルス感染症[COVID-19]の進行を抑制できない)の2207件だった。この論文は8月に電子版で公開されていたため、日経メディカルOnlineでも主な内容を既に紹介している。

 この研究は、発症から7日以内に米国の48病院を救急受診したCOVID-19患者に回復期血漿を投与して、病状の進行を抑制できるかについて調べたランダム化比較試験だ。受診時点では酸素投与の必要はないが、年齢が50歳以上か、重症化しやすい危険因子を1つ以上保有している患者を、回復期血漿群257人とプラセボ群254人に割り付け、15日以内の病状の進行(患者の入院、救急部門の再受診、死亡)を比較している。

 その結果、回復期血漿群の77人(30.0%)とプラセボ群81人(31.9)に病状の進行が見られ、両群のリスク差は1.9パーセンテージポイント(95%信頼区間-6.0から9.8ポイント)で、差は有意ではなかった。副次評価項目の1つである30日後までの患者死亡も、回復期血漿群5人(1.9%)とプラセボ群1人(0.4%)、リスク差は-1.6パーセンテージポイント(-4.2から0.5ポイント)で、有意差はなかった。そのため著者らはCOVID-19患者に対する回復期血漿の投与は、病状の進行を抑制しなかったと結論している。


 今回注目した論文は泌尿器科領域でツイート数の多かった「Noninvasive Diagnosis of PLA2R-Associated Membranous Nephropathy」(抗ホスホリパーゼA2受容体抗体による膜性腎症の非侵襲的診断)だ。

 膜性腎症は、腎臓の糸球体基底膜に免疫複合体が沈着して肥厚する疾患だ。中高年で発症するネフローゼ症候群の原因として最も頻度が高い。軽症で自然寛解する例もあるが、難治性で末期腎不全に至る例もある。原因の約8割は特発性とされ、悪性腫瘍、自己免疫疾患、感染症、薬剤性などに続いて起こる2次性の膜性腎症は2割程度とされている。診断は腎生検で組織学的に確認するしかない。

 ところが、特発性膜性腎症患者の大半は、抗ホスホリパーゼA2受容体抗体を保有しているという研究が2009年に報告され、注目を集めた。著者らは以前に、推定糸球体濾過量(eGFR)が維持され、2次性膜性腎症を起こす原疾患がなく、蛋白尿が持続する患者に抗体検査を行い、抗ホスホリパーゼA2受容体抗体検査が陽性であれば、腎生検なしでも膜性腎症の診断が確定できると報告した。しかし、研究グループ以外のデータで外部検証されていなかったため、この論文では米国のメイヨー・クリニック、コロンビア大学医療センター、スペインのヴァルヘブロン大学病院の患者データをレトロスペクティブに検討している。

 これらの施設で抗ホスホリパーゼA2受容体検査が陽性だった患者は276人いた。このうち、腎生検を受けていない患者、腎移植を受けた患者、小児患者などを対象から除外した。残った163人のうち、47人には2次性膜性腎症の原因となり得る関連疾患があり、15人には糖尿病があった。残りの101人は全員が腎生検で膜性腎症と診断されていたことから、著者らは抗ホスホリパーゼA2受容体検査で、非侵襲的に特発性の膜性腎症を診断できると結論している。

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