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9月13~19日の「話題になった論文」
BNT162b2ワクチンの有害事象を調べたイスラエルの研究が再度注目を集める

2021/09/28

 本コラムでは、Googleが提供する学術雑誌のインパクト指標「h5-index」から、各領域10誌を抽出。それを元に世界中で最も多くツイートされた論文を紹介する。

 9月6~12日に最もツイート数が多かったのは、本コラムでも9月7日に一度紹介したNEJMの論文「Safety of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Setting」(BNT162b2ワクチンの[イスラエル]全国規模での安全性)で1万5809件だった。概要を再掲載すると、イスラエル最大の医療供給組織で、同国民の医療保険の約52%をカバーしているというClalit Health Servicesのデータを利用した大規模な研究だ。BNT162b2ワクチン接種者と、各種の条件をマッチさせた接種を受けていない人を対照群として、ワクチン接種に伴う有害事象のリスク比を算出した。また、比較のためにSARS-CoV-2に感染した患者と、条件をマッチさせた非感染者対照群とのリスク比も算出している。

 ワクチン群の候補者173万6832人の中から、非接種者と年齢、性別、人種、居住地、社会人口動態条件、併存疾患などの条件がマッチするペアを88万4828組選び出した。年齢の中央値は38歳で、48%が女性だった。非接種者と比較したワクチン群の有害事象のリスク比は、心筋炎3.24(95%信頼区間1.55-12.44)、リンパ節腫脹2.43(2.05-2.78)、虫垂炎1.40(1.02-2.01)、帯状疱疹1.43(1.20-1.73)などだった。

 一方、SARS-CoV-2感染者23万3392人のうち、条件がマッチする非感染者のペアが見つかったのは17万3106組だった。年齢の中央値は34歳、54%が女性だった。心筋炎のリスク比は18.28(3.95-25.12)で、BNT162b2ワクチン接種によるリスクよりも、SARS-CoV-2に感染した場合の方が心筋炎のリスクは著しく高かったと結論している。またSARS-CoV-2感染者では、急性腎障害、肺塞栓、頭蓋内出血、心膜炎、心筋梗塞、深部静脈血栓などのリスク比も高かったので、様々なリスクを考えるとワクチンを接種するのが合理的という結果だ。

 今回注目した論文は、精神科領域でツイート数の多かった「Perturbations in Gut Microbiota Composition in Psychiatric Disorders」(精神疾患における腸内細菌叢の構成変化)だ。近年では各種の疾患と腸内細菌叢の関連を調べる研究が盛んになり、精神科領域でも複数の疾患で腸内細菌叢の乱れを示すデータが報告されている。しかし、これらのデータがそれぞれの疾患に特有のものなのか、精神疾患に共通する特徴なのかは明らかではない。そこで著者らは、成人の精神疾患患者と腸内細菌叢の関連を調べた研究を抽出して系統的レビューとメタアナリシスを実施することにした。

 対象にした精神疾患は、大うつ病性障害、双極性障害、統合失調症、神経性食欲不振症、不安症、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、注意欠陥・多動性障害だ。各疾患について、腸内細菌の相対的な存在量と、β多様性(2つのサンプルの多様性の相違度)のグループ間比較行った。α多様性(1つのサンプルの多様性)については、ランダム効果メタアナリシスで標準化平均差(SMD)を求めた。

 合計34件の研究がデータを提供し、α多様性のメタアナリシスには1519人の患者と1429人の健常人対照者が含まれていた。対照群と比較して精神疾患の患者群は微生物種の豊富さが有意に減少していた。観察種のSMDは-0.26(95%信頼区間-0.47から-0.06)、α多様性のChao1指標のSMDは-0.5(-0.79から-0.21)だった。疾患別に見ると、健常者よりも一貫して減少していたのは双極性障害のみだった。α多様性のShannon指数(対数換算で希少種に重みづけ)とSimpson指数(二乗して主要種に重みづけ)には有意差は見られなかった。β多様性には、大うつ病と統合失調症でのみ一貫して違いが見られた。

 細菌種の相対量では、疾患特異的な違いはほとんど見られなかった。逆に精神疾患に共通する腸内細菌叢のパターンが見つかった。大うつ病、双極性障害、統合失調症、不安障害では共通して、Faecalibacterium属とCoprococcus属が枯渇しており、Eggerthella属が増加していた。これらの結果から著者らは、精神疾患患者の腸内細菌叢の特徴は、酪酸を産生する抗炎症性の細菌が減少し、炎症環境を好む細菌種が増加していたことだと結論している。

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