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8月23~29日の「話題になった論文」
BNT162b2ワクチンの有害事象を調べたイスラエルの大規模研究が注目

2021/09/07

 本コラムでは、Googleが提供する学術雑誌のインパクト指標「h5-index」から、各領域10誌を抽出。それを元に世界中で最も多くツイートされた論文を紹介する。

 8月23~29日に最もツイート数が多かったのは、NEJMの論文「Safety of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Setting」(BNT162b2ワクチンの[イスラエル]全国規模での安全性)で1万3869件だった。イスラエル最大の医療供給組織で、同国民の医療保険の約52%をカバーしているというClalit Health Servicesのデータを利用した大規模な研究だ。BNT162b2ワクチン接種者と、各種の条件をマッチさせた接種を受けていない人を対照群として、ワクチン接種に伴う有害事象のリスク比を算出した。また、比較のためにSARS-CoV-2に感染した患者と、条件をマッチさせた非感染者対照群とのリスク比も算出している。

 ワクチン群の候補者173万6832人の中から、非接種者と年齢、性別、人種、居住地、社会人口動態条件、併存疾患などの条件がマッチするペアを88万4828組選び出した。年齢の中央値は38歳で、48%が女性だった。非接種者と比較したワクチン群の有害事象のリスク比は、心筋炎3.24(95%信頼区間1.55-12.44)、リンパ節腫脹2.43(2.05-2.78)、虫垂炎1.40(1.02-2.01)、帯状疱疹1.43(1.20-1.73)などだった。

 一方、SARS-CoV-2に感染者23万3392人のうち、条件がマッチする非感染者のペアが見つかったのは17万3106組だった。年齢の中央値は34歳、54%が女性だった。心筋炎のリスク比は18.28(3.95-25.12)で、BNT162b2ワクチン接種によるリスクよりも、SARS-CoV-2に感染した場合の方が心筋炎のリスクは著しく高かったと結論している。またSARS-CoV-2感染者では、急性腎障害、肺塞栓、頭蓋内出血、心膜炎、心筋梗塞、深部静脈血栓などのリスク比も高かった。

 今回注目した論文は、外科領域でツイート数の多かった「Targeted Intraoperative Molecular Imaging for Localizing Nonpalpable Tumors and Quantifying Resection Margin Distances」(蛍光トレーサーを用いた分子イメージングで、手術中に非触知性腫瘍の位置確認と切除マージンを定量化できるか?)だ。固形癌の手術では、腫瘍を完全に切除することが望ましいのは言うまでもないが、実際には境界が不明瞭で困難な症例も多い。そこで、術前に腫瘍細胞を標的とした蛍光トレーサーを点滴静注しておき、切除領域の決定を視覚的にアシストしようという試みがこの研究だ。

 2017年5月~2020年6月に、オープンラベルの非ランダム化試験を米国の大学病院1施設で行った。対象は肺癌が疑われる小さい病変(T1サイズ)があり、X線画像の特徴から非触知性の病変だと考えられた患者40人。患者は術前に葉酸受容体を標的とした近赤外トレーサーを静注された。外科医は胸腔鏡で蛍光を観察しながら触診で病変を確認した。さらに外科医は蛍光画像を参考にして切除範囲とマージンを決定した。手術結果は最終的な病理報告と付き合わせた。

 患者の年齢は中央値で66.5歳(四分位範囲62~72歳)で、26人(65%)が女性だった。40人中22人(55%)は従来の方法でも切除範囲を決定できたが、トレーサーを使用すると40人中36人(90%)に増えた。トレーサーの使用で触知できなかった病変18個のうち15個(83.3%)を特定することができた。最終病理報告の腫瘍断端マージンとの一致率も高かったという。まだ臨床応用できる段階ではないが、どんな種類の癌に有効かも含め、今後の発展が期待される技術の1つだ。

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