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8月2~8日の「話題になった論文」
CRISPR-Cas9をアミロイドーシスの治療に応用する研究

2021/08/17

 本コラムでは、Googleが提供する学術雑誌のインパクト指標「h5-index」から、各領域10誌を抽出。それを元に世界中で最も多くツイートされた論文を紹介する。

 8月2~8日に最もツイート数が多かったのは、NEJM誌の「CRISPR-Cas9 In Vivo Gene Editing for Transthyretin Amyloidosis」(CRISPR-Cas9を用いたトランスサイレチン型アミロイドーシスの生体内遺伝子編集治療の第1相臨床試験)の4288件だった。トランスサイレチンはその名の通り、血清中や脳脊髄液中で甲状腺ホルモンのサイロキシンを輸送する蛋白質だ。このトランスサイレチンを構成する4量体分子が、ミスフォールドして凝集するとアミロイドーシスを引き起こす。トランスサイレチン型アミロイドーシスは、心臓や神経に蓄積したアミロイドが、心不全やニューロパチーを起こす難治性疾患だ。この研究では、遺伝性のトランスサイレチン型アミロイドーシス患者に対して、CRISPR-Cas9システムを用いて標的遺伝子をノックアウトし、血液中のトランスサイレチン濃度を減らし、治療に役立てることが目的だ。

 第1相臨床試験では、NTLA-2001と名付けられた生体内遺伝子編集治療薬を、多発ニューロパチーを伴う遺伝性トランスサイレチン型アミロイドーシス患者6人に投与している。初期投与量は0.1mg/kgと0.3mg/kgの2通りで3人ずつに投与した。その結果、0.1mg/kgを投与された患者では、血清中のトランスサイレチン濃度がベースラインから平均値で52%(範囲は47~56%まで)減少し、0.3mg/kgを投与された患者では87%(範囲は80~96%まで)減少したと報告している。

 今回注目した論文は、眼科分野で最もツイート数が多かった「Myopia incidence and lifestyle changes among school children during the COVID-19 pandemic: a population-based prospective study」(COVID-19パンデミック下での学童の生活習慣変化と近視の発症率)だ。この研究が可能だったのは、香港で小学校をランダムサンプリングし、年齢6~8歳の小学生を対象に、眼の健康状態を継続的に追跡するコホート研究「Hong Kong Children Eye Study(HKCES)」が、2015年から始まり現在も継続しているという背景があったからだ。この論文では、香港でCOVID-19の流行が始まる前の2020年1月に3年間の追跡を終了したCOVID-19前コホートと、2019年12月から追跡を開始したCOVID-19コホートの小学生の近視に関連するデータを比較している。

 COVID-19コホートでは709人の小児を7.89±2.30カ月追跡しており、COVID-19前コホートでは1084人の小児を37.54±3.12カ月追跡した。近視の発症率はCOVID-19コホートが19.44%、COVID-19前コホートが36.57%だった。COVID-19の期間中に小児の球面等価屈折率は-0.50±0.51ジオプトリ変化し、眼軸長は0.29±0.35mm長くなった。ライフスタイル調査では、小児の屋外での活動時間は1日当たり1.27±1.12時間から、0.41±0.90時間に減っており、画面を見ている時間は1日当たり2.45±2.32時間から、6.89±4.42時間に増えていた。これらの結果から著者らは、香港の小学生はパンデミック下の生活の変化により、近視の発症率が増加する傾向を見せていると結論している。

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