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7月19~25日の「話題になった論文」
ファイザー製ワクチン2回接種完了後にはデルタ株に対しても有効性88.0%

2021/08/03

 本コラムでは、Googleが提供する学術雑誌のインパクト指標「h5-index」から、各領域10誌を抽出。それを元に世界中で最も多くツイートされた論文を紹介する。

 7月19~25日に最もツイート数が多かったのは、NEJM誌の論文「Effectiveness of Covid-19 Vaccines against the B.1.617.2 (Delta) Variant」(B.1.617.2系統[デルタ株]に対するCOVID-19ワクチンの有効性)で、1万3570件だった。この論文は、英国のNational Immunisation Management Systemのデータを利用した症例対照研究だ。英国でB.1.1.7系統(アルファ株)が感染の主流となり、 B.1.617.2系統(デルタ株)が広がり始めた時期に調査を行い、Pfizer/BioNTechのBNT162b2ワクチンとAstraZenecaのChAdOx1 nCoV-19のワクチンについて、初回接種から21日以上経過した人、2回目の接種から14日以上経過した人、接種を受けていない人の発症率を調べることによりワクチンの有効性を評価するものだ。

 その結果、どちらかのワクチンを1回接種した後の有効性は、アルファ株に対して48.7%(95%信頼区間45.5-51.7%)、デルタ株に対しては30.7%(25.2-35.7%)で、ワクチンの種類による差は見られなかった。一方、2回接種完了後の有効性は、BNT162b2がアルファ株に対して93.7%(91.6-95.3%)、デルタ株に対しては88.0%(85.3-90.1%)だった。ChAdOx1 nCoV-19ではアルファ株に対して74.5%(68.4-79.4%)、デルタ株に対しては67.0%(61.3-71.8%)だった。そのため、ワクチンの2回接種を完了すれば、デルタ株による発症を減らす効果が期待できるとしている。

 今回注目した論文は、総合診療科分野で最もツイート数が多かった「Estimation of Admission D-dimer Cut-off Value to Predict Venous Thrombotic Events in Hospitalized COVID-19 Patients: Analysis of the SEMI-COVID-19 Registry」(COVID-19入院患者の静脈血栓イベントを予測するための入院時Dダイマーカットオフ値の推定)だ。タイトルの通り、入院時の検査値からCOVID-19入院患者の血栓症リスクを予測できるのであれば、病院のスタッフにとって有用だ。

 この研究は、スペイン国内の17地域から150病院が参加している患者登録「The SEMI-COVID-19 Registry」を利用したものだ。COVID-19の診断が確定した18歳以上の連続する入院患者を登録している。入院時にDダイマー検査を実施していた9386人の患者のうち、静脈血栓イベント(VTE)を起こした患者は2.2%、肺塞栓を起こしたのは1.6%、深部静脈血栓症(DVT)を起こしたのは0.4%だった。VTEを起こした患者はそれ以外の患者に比べ、頻呼吸の割合が高く(42.9%と31.1%)、酸素飽和度93%未満の患者が多く(45.4%と33.1%)、入院時のDダイマー値が高かった(中央値で1.4と0.6)。

 Dダイマー検査値とVTE診断のROC曲線を作成すると、カットオフ値を1.1μg/mLにした場合にROC曲線下面積が最も大きく0.7(95%信頼区間0.66-0.74)となった。この場合の検査特性は感度72%、特異度49%、陽性予測値4%、陰性予測値99%となった。一方、カットオフ値4.7μg/mLにした場合、感度は27%と低くなるが、特異度は95%と高くなった。この場合陽性予測値は9%、陰性予測値は98%だった。

 さらに事後解析で、低分子量ヘパリンなどを用いた抗凝固療法の強度とDダイマー検査値により、死亡率を減らせるカットオフ値を推定した。カットオフ値を1.0μg/mLにした場合、VTE患者に抗凝固療法を行わないと死亡率は42.3%だが、予防量の抗凝固療法で26.3%に減らせた。同様にカットオフ値2.0μg/mLの場合、抗凝固療法なしだと死亡率は51.0%だが、中間量の抗凝固療法で28.8%に減らせた。カットオフ値が3.0μg/mLでは、血栓症治療の投与量で抗凝固療法を行うことで、死亡率を50.6%から31.3%に減らした。これらの結果から著者らは、入院時のDダイマー値が3.0μg/mLを超えている患者には、VTEのスクリーニングと、治療用量の抗凝固療法の準備を検討するべきだとしている。

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