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食道のレビー病理はレビー小体型認知症の進行と相関──日本の剖検例コホート研究
Acta Neuropathologica誌より

2021/02/24
平山幹生(春日井市総合保健医療センター参事)

 レビー小体型認知症における食道のレビー病理の意義を検討した報告である1)
 
 レビー小体型認知症は、レビー小体(LB)と神経突起が中枢神経系と末梢神経系に現れる神経変性疾患である。これは臨床的に、パーキンソン病、レビー小体型認知症、純粋自律神経不全と診断されている19、20)。LBの本質はリン酸化αシヌクレインにある4)。病理的には、レビー小体型認知症患者の中枢神経系と末梢神経系におけるリン酸化αシヌクレインの蓄積と分布を調べることで診断可能である5)。パーキンソン病患者は、よく知られている運動症状に加えて、自律神経不全症、うつ病、無関心、精神病などの心理的症状、認知機能低下、または睡眠行動異常症などの非運動症状(NMS)を示す。一部の非運動症状は、運動症状またはパーキンソン病の臨床診断に先行することが示されている2、20、24)。実際、パーキンソン病の主要な非運動症状である消化管機能障害は、腸神経系のレビー病変がパーキンソン病やレビー小体型認知症の予測マーカーとなり得ることから、最近注目されている18、25、26)

 レビー病理の検討は最初、Braakらにより進められた12、13)。末梢神経系の病理は、発症前または症候期の間に多数の器官、組織に見られるαシヌクレインの蓄積に注目すべきである5)。例えば、交感神経節16)、心臓22)、副腎16)、皮膚、嗅粘膜、嗅上皮、嗅球7、9)、後部下垂体、脊髄15)、後根神経節、顎下腺、上部気道、消化管、胆嚢18)、および生殖管18)などである。腸神経系のレビー小体病変は、嚥下障害を伴うパーキンソン病患者で最初に報告され、次に巨大結腸を伴うパーキンソン病患者で報告された。その後、食道下部に最も頻繁に発生することが示されている5、27、28)。剖検例を対象とした研究では、腸免疫系におけるαシヌクレイン沈着の頻度を、パーキンソン病/レビー小体型認知症で50~100%、偶発性レビー小体病で14~100%、および対照群で0~52%と推定した3、5、6、8、11、17)。さらに、手術標本または腸神経系の生検の分析によると、最大で発症の20年前から13~100%の陽性率を示している18、25、26)。ただし、高齢者または発症前のレビー小体病変のある患者における腸神経系の病理に基づく正確な有病率、およびレビー小体病変が進行している患者における特異性は依然として不明である。

 そこで同グループは、レビー小体病変の進行における腸神経系のレビー病理の役割を明らかにするために、Brain Bank for Aging Research(BBAR)の高齢日本人のコミュニティベースの剖検コホートを使用して臨床病理学的研究を行った。

 518例の剖検例のうち、73%は呼吸器疾患、悪性新生物、または心血管疾患で死亡したが、高齢者の約3分の1(34%)が中枢神経系および/または末梢神経系にレビー病理を示した。これらのほとんどの症例で、病理は中枢神経系と末梢神経系の両方で観察された(68%)。末梢神経系のみの病理は、交感神経節に限定された5例を含む9例(5%)で見られた。中枢神経系のみの病理は48例(27%)で観察され、そのうち23例が扁桃体優位、14例が脳幹優位、8例が辺縁系、3例が嗅球のみだった。15例が神経病理学的にアルツハイマー病と診断された。食道のみにレビー小体病理を示すものや、中枢神経系病態を伴わない食道へのαシヌクレインの蓄積を示したものはなかった。レビー病理の陽性率は年齢(男性:陽性症例、平均死亡年齢=81.1±9.5歳;陰性症例、77.9±11.8歳;女性:陽性症例、86.4±8.5歳;陰性症例、82.3±11.0年;P<0.05)および神経原線維変化(p<0.0001)または老人斑(P<0.05)が、より高い病理学的ステージと有意に関連していたが、性、APOE型、嗜銀顆粒のステージ、pTDP-43とは関連していなかった。

 末梢神経系における食道のレビー病理の特異性を明らかにするために、食道、交感神経節、心臓、副腎、および皮膚の陽性率を検討した。レビー小体病変が認められた178例のうち、αシヌクレイン沈着が確認された割合は、交感神経節70.2%(125例)、心臓55.1%(98例)、 食道43.8%(78例)、副腎33.7%(60例)、皮膚18.0%(32例)であった。発生率はBBAR LBステージ(独自の臨床病理ステージ)の進行とともに増加し、食道の比率が最も相関し(r=0.95)、次に交感神経節(r=0.85)、心臓(r=0.87)、副腎(r=0.81)、および皮膚(r=0.71)の順に相関した。食道のαシヌクレイン沈着の割合は心臓と副腎のそれとほぼ同じだったが、食道の陽性率は進行とともに徐々に増加し、ステージ5までに94.7%に達した。対照的に、心臓と副腎の発生率は進行の段階とともに減少した(心臓ではステージ4–5が94.7%から84.2%に、副腎ではステージ3–5が75.0%から57.9%)。交感神経節が最も高い発生率を示し、少なくともステージ3であったすべての症例でレビー病理が観察された。

 食道のレビー病理の特徴を調べるために、病理の有無を臨床的、遺伝的、および神経病理学的因子と比較した。レビー病理は自律神経障害、パーキンソン症候群、および第4回DLBコンセンサスガイドラインに基づく病理ステージ、BBAR LB stage、およびBraak LB stage(P<0.0001)12、13)と有意に関連していたが、年齢、性別、または脳重量とは関連しなかった。レビー病理は認知症に関連する傾向があったが、その傾向は統計的に有意でなかった(P<0.0562)。

 食道壁のレビー病理の部位を調べるために、壁の部位別のαシヌクレインの集積密度を半定量化し、BBAR LB stageのそれぞれの密度を比較した。レビー小体病変はアウエルバッハ神経叢と外膜において、HE染色による明確なハローと抗αシヌクレイン免疫組織化学による丸い封入体を伴う均質で球状の細胞質封入体として観察された。さらに、レビー神経突起またはpSyn#64免疫反応性凝集体(円形または細長い細胞質または神経突起の封入体)が、マイスナー神経叢、アウエルバッハ神経叢、および外膜で見いだされた。pSyn#64-IR神経突起(糸状構造)のみが粘膜と粘膜筋板で観察された。レビー病理が認められた患者の部位別の割合は、固有筋層(MP)41.6%(74/178)、外膜33.1%(59/178)、粘膜下組織14.6%(26/178)、粘膜筋板8.4%(15/178)、粘膜4.5%(8/178)だった。発生率はステージの進行とともに増加した。固有筋層と外膜は最も高い発生率を示し、BBARステージ5で89.5%(17/19)、Braakステージ6では固有筋層と外膜でそれぞれ92.9%(26/28)と78.6%(22/28)に達した。対照的に、レビー病態は粘膜および粘膜筋板ではあまり観察されなかった。

 これらの結果から、(1)高齢者の3分の1が中枢神経系および/または末梢神経系でレビー病理を示した、(2)食道におけるレビー病理の発生率はレビー小体病で43.8%、認知症を伴うパーキンソン病/レビー小体型認知症(BBAR LBステージ4–5)で92.1%、認知症のないパーキンソン病(ステージ3)で75% 、preclinical/prodromalレビー小体病(ステージ1–2)で35%、レビー小体病の初期段階(ステージ0.5)で3.4%だった。対照群(ステージ0)ではゼロであり、BBAR LBステージの進行と相関する──とまとめている。

 食道のレビー小体が最初にパーキンソン病で報告されて以来23)、ヒトENSのレビー病理の発生率を調査する40以上の論文が報告されている。今回の研究の特徴は、パーキンソン病/レビー小体型認知症、認知症のないパーキンソン病、preclinical/prodromalパーキンソン病、および対照群を含む高齢者コホートを対象とした点だ。

 レビー病理が伝搬する機序を、Braakら12、13、14)の検討や本検討をもとに考えると、2つの入口・経路が仮定される。(1)末梢神経系から脳幹、大脳辺縁系、新皮質に伝搬する脳幹上行経路、(2)嗅上皮および嗅球から扁桃体に伝播する嗅覚-扁桃体経路──だ。Braak仮説は末梢神経系をレビー病理の入口であると提唱したが11)、胃腸系がパーキンソン病の起源であるかどうかは議論の余地がある21)

 本検討により、食道のレビー病理がLBDの予測因子であることが示された。食道病変の発生率と重症度は、BBAR LBステージと相関していた。食道胃接合部(EGJ)のレビー病理が胃食道逆流症の一因となる可能性があると考えられる。したがって、本検討結果は、レビー小体病の後期における誤嚥性肺炎合併を説明するものとなる。また、心臓前壁の自律神経におけるレビー病理の発生率が、ステージ4(94.7%)からステージ5(84.2%)へと進行するとともに減少しており、神経線維の減少に関連している可能性がある。ただしこの減少は、少数の高stage例のみに認められるものかもしれない。

 本検討では、高齢者の3分の1がレビー病理を示し、その43.8%が食道で認められることが判明した。食道のレビー病理がレビー小体病の予測因子になることを示唆している。

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