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NEJM誌から
母の子宮頸癌と子の肺癌に関連が見られた症例
経腟分娩時に吸引した癌細胞が原因と推測された日本の症例

 国立がん研究センターの荒川歩氏らは、肺癌と診断された男児2人と子宮頸癌だったそれぞれの母親の、正常組織と腫瘍組織の遺伝子変異について検討したところ、子の肺癌は、経腟分娩時に母親の癌細胞を吸引したものから生じている可能性が高いことが分かった。2組の親子の症例はNEJM誌2021年1月7日号に掲載された。

 母親の癌が子に移行することは極めてまれだが、母親の血液癌、皮膚癌、肺癌、子宮頸癌が、胎盤を介して血行性に子の複数の臓器(脳、骨、肝臓、軟部組織など)に移行した例はいくつか報告されていた。これまでの症例では、小児の患者は全員が2歳未満で癌と診断されており、一部の患者には、腫瘍の自然退縮が見られていた。

 血行性以外のルートでは、母親が子宮頸癌の場合、経腟分娩で産道を通過する際に羊水に混じった腫瘍細胞を肺に吸引してしまう可能性も理論的に指摘されていた。しかし、こちらに該当する事例は報告されていない。今回著者らは、次世代シーケンサーを用いた腫瘍組織の遺伝子塩基配列解析で明らかになった、母親の子宮頸癌が子に伝播したと考えられる事例を報告することにした。

 2人の小児癌患者は、それぞれ生後23カ月と6歳の時点で肺癌と診断された。癌の起源が母親の子宮頸癌であることは、偶然に発見された。それらの患者が、2013年から行われてきた、癌関連多遺伝子パネル検査(NCCオンコパネル)の開発と有用性の検討を目的とするTOP-GEAR(Trial of Onco-Panel for Gene-profiling to Estimate both Adverse events and Response)プロジェクトの対象となったからだ。 

 「NCCオンコパネル」は、日本人の癌で変異が多い114の遺伝子の配列を、次世代シーケンサーを用いて比較する検査だ。2名の母親はともに子宮頸癌と診断されていたことから、男児の肺癌と正常組織、および母親の子宮頸癌と正常組織を比較したところ、男児の肺癌細胞にはY染色体がなく、遺伝子解析でも母親の子宮頸癌に似た特徴を示した。

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