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NEJM誌から
SARS-CoV-2 欧州株、変異のない武漢株との違いは?
D614G変異株は武漢株より感染性は高いが重症度は同等

 米国North Carolina大学Chapel Hill校のRalph S. Baric氏は、SARS-CoV-2の変異株のうち、欧州南部で見つかり、2020年3月以降全世界に広まったスパイク蛋白質にD614G変異を有する株に関する基礎研究データをレビューし、流行当初に中国の武漢で同定された株に比べ感染性が高いことなどをNEJM誌2020年12月31日号に報告した。

 RNAウイルスは、感染が拡大してパンデミック状態になると、病原性や毒性、感染性などが変化した突然変異が選択される可能性があることは以前から示されていた。しかし、近年になって動物とヒトから見つかったコロナウイルスの変異の過程を検討した研究は少ない。

 SARS-CoV-2はコウモリからヒトに感染したと考えられており、武漢で同定された初期のウイルス株の遺伝的多様性は限定的だった。これは、ウイルスが単一の感染源からヒト集団にもたらされた可能性を示唆する。

 コロナウイルスのRNAの校正機能は高く、複製の精度は高い。にもかかわらず、2020年2月下旬に実施された遺伝疫学調査において、欧州南部で、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質にD614G変異(スパイクタンパク質の614番目のアミノ酸がアスパラギン酸からグリシンに置換されている)を有するウイルス株が見つかった。この変異株の感染は急速に広がり、短期間のうちに世界中で最も流行している株になった。

 D614Gウイルスに感染した患者では、この変異を持たない野生型のウイルスに感染した患者に比べ、上気道のウイルス量が多い可能性が示されているが、COVID-19の重症度には差は見られていない。in vitroの検討では、SARS-CoV-2スパイク蛋白質にD614G 変異を有する偽型ウイルスを細胞株に感染させ、継代培養した実験で、感染力の増加が見られていた。構造解析では、D614G変異のあるスパイク蛋白質の受容体結合ドメイン(RBD)は、この変異がないRBDよりもオープンコンフォメーションをとる可能性が高く、ヒトのACE2受容体に結合する能力が向上していることが示唆されている。

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