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NEJM誌から
ヒトの健康と腸内細菌叢に関する最新情報
112本の論文による研究のレビュー

 ヒトの腸内細菌叢を構成する細菌の組成や機能の乱れが、消化器疾患のみならず、神経系、呼吸器系、代謝系、心血管系の疾患や肝臓病にも関係することが示唆されている。米California大学San Francisco校のSusan V. Lynch氏らは、これまでに報告されている主な研究結果を紹介するレビューをNEJM誌2016年12月15日号に投稿した。

 ヒトとかかわりのある微生物(細菌、真菌、ウイルスなど)を個々に培養する方法ではなく、集団として分析する技術が登場して以来、人体の内外に存在するあらゆる微生物のゲノムを分析するマイクロバイオーム研究が急速に進展している。現在行われているのは、バイオマーカー(16s rRNA遺伝子など)の網羅的な解析や、あらゆるゲノムを網羅的に解析するメタゲノム解析、転写物全体を分析するメタトランスクリプトーム解析、蛋白質全体を分析するメタプロテオーム解析、代謝産物全体を分析するメタボローム解析などだ。

 現時点では多くの研究が、腸内や口腔、皮膚の細菌叢と疾患の因果関係や、関連する疾患の発症機序に焦点を当てているが、そうした領域の理解が進めば、新たな予防治療戦略を構築できると期待されている。

 ヒトの場合、消化管に非常に大きな微生物生態系が存在する。そこには何兆個もの微生物細胞が生息している。欧米と中国の1200人の糞便を標本とするメタゲノム解析では、計990万個の腸内細菌遺伝子が検出された。10億年以上にわたって、ヒトと腸内細菌は共進化を続け、相互依存の関係を築き上げた。その結果、腸内細菌叢は、ホストであるヒトの免疫系の教育と成熟に重要な役割を果たすようになり、腸内細菌叢とヒトの免疫系は、ホスト出生後に共に発達することが明らかになっている。

 これまでに行われた研究は、腸内細菌叢が、病原体の過剰な増殖を阻止し、ホスト細胞の増殖と血管新生に影響を与え、腸の内分泌機能、神経系の信号伝達、骨密度などを制御し、ホストにエネルギー源を与え、ビタミンを産生し、神経伝達物質の生成に重要な役割を果たし、胆汁酸塩の代謝を担い、特定の薬剤に対する反応や薬剤の作用を修飾し、外来の毒素の排除を促進する作用を持つことを示している。腸内細菌叢が担う機能がこれほどにも多様であることから、研究の対象となる疾患は、癌、炎症性疾患、代謝性疾患、心血管疾患、自己免疫病、神経疾患、精神疾患など広範な領域に及ぶ。

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