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NEJM誌から
「機能性ディスペプシアは予後を短縮しない」
診断、治療、予後に関する最新レビューがNEJM誌に掲載

 機能性ディスペプシアは、再発と寛解を繰り返す疾患で、消化不良の原因として最も一般的だ。オーストラリアNewcastle大学のNicholas J. Talley氏らは、NEJM誌2015年11月5日号に、最新の情報も含めて機能性ディスペプシアの診断、治療、予後についてレビューする論説を発表した。

 論説の原題は「Functional Dyspepsia」、概要は、NEJM誌のWebサイトで閲覧できる。以下に、本論説の記載内容について、概要を記す。

機能性ディスペプシアとは
 現在、機能性ディスペプシアの診断には、Roma III基準が標準的に用いられている。Roma III基準は、上腹部の疼痛と灼熱感、早期満腹感(通常の量の食事を取れない)、食事中または食後の膨満感、といった症状を目安にしている。症状は慢性的で、週に1回以上発生し、少なくとも6カ月以上にわたってそうした状態があること、器質的疾患がないことなどが、機能性ディスペプシアと診断する条件となっている。

 世界的な有病率は5%から11%で、治療を求めて受診する患者は最大で40%程度だ。

 機能性ディスペプシアは慢性的な疾患だが、生存期間短縮に関連することを示唆するエビデンスは存在しない。しかし、欠勤や生産性の低下と、患者の収入減をもたらし、医療費を高める。米国では、2009年の機能性ディスペプシアに対する医療費は180億ドルを超えた。社会的、経済的な影響を最小限に留めるためには、医師がこの疾患について理解し、診察や診断検査を適切に行い、有効な治療を提案することが重要だ。

 基質性の消化不良と機能性の消化不良の区別は難しい。消化不良患者に上部消化管内視鏡検査を行うと、消化性潰瘍が検出される患者は10%未満で、胃食道に癌が見つかる患者は1%に満たない。従って、消化不良のみを訴え、上部消化管の癌を示す警告症状(alarm symptoms)が無い患者は、機能性ディスペプシアと診断される可能性が最も高い。なお、H. pylori感染率が高い国では、感染の有無を調べる検査の実施が推奨される。

 過去20年間、機能性ディスペプシアと他の機能性の消化器疾患、特に胃食道逆流症との鑑別の標準化が進められてきた。しかし、いまだに機能性ディスペプシアと胃食道逆流症の区別は難しい。ただし、便秘や下痢などの下部消化管症状が無ければ、機能性ディスペプシアである可能性が高い。

機能性ディスペプシアの分類
 Roma IIIでは、機能性ディスペプシアを、「食後愁訴症候群」と「心窩部痛症候群」に大別している。

 食後愁訴症候群は、通常の量の食事の後の膨満感、または早期満腹感により、通常の量の食事が食べきれない状態が週に数回以上ある場合を指す。心窩部痛症候群は、心窩部に間欠的な疼痛または灼熱感が週1回以上ある場合を指す。両方の条件を満たす患者が、15%から35%いると報告されている。

病態生理学的な特徴
 心理的苦痛、特に不安が機能性ディスペプシアに関係し、一部の患者では症状発現に先行するが、それ以外の患者では、消化管症状の発現後に不安が生じる。ゆえにこの疾患には、脳腸相関の関与が想定されている。また、中枢での痛み認知の異常が関与する可能性も指摘されている。遺伝的な要因の関与も示されているが、関係は弱い。

 食事、例えば高脂肪食などによって症状が誘導されるが、食物に対する不耐性やアレルギーの関与についてはほとんど研究されていない。

機能性ディスペプシアの予後
 機能性ディスペプシア患者を長期間追跡した研究では、50%で症状が消失、15~20%の患者では症状が持続した。残りの30~35%は症状の変動を経験し、やがて他の機能性消化管疾患の基準を満たすようになった。

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