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NEJM誌から
サキサグリプチンとアログリプチンは心血管リスクを増減させない
プラセボ対照のRCT「SAVOR-TIMI 53」「EXAMINE」の結果

 選択的ジペプチジルペプチダーゼ4DPP4)阻害薬のサキサグリプチンアログリプチンを心血管リスクの高い糖尿病患者に投与し、心血管系への影響をプラセボと比較したランダム化比較試験(RCT)で、これらの薬剤が心血管リスクの上昇にも低減にも関係しないことが示された。2本の論文はいずれも、NEJM誌2013年10月3日号に掲載された。

 2型糖尿病は心血管疾患を有する患者のみならず、心血管疾患歴のない患者においても心血管リスクの上昇に関係する。血糖コントロールが改善されれば、微小血管合併症のリスクは低下することが示されているが、心血管リスクに対する好ましい影響を示した質の高い研究はなく、逆に一部の血糖降下薬で心血管系有害事象を生じる可能性が示された。このため、米食品医薬品局(FDA)は08年、新規の血糖降下薬については承認の前後に心血管系への安全性を評価するよう求め、他国の監督当局も同様の方針を示している。

心血管イベントリスクのある患者の虚血性イベント発生に影響せず
 サキサグリプチンの心血管系への安全性と心血管イベントリスク低減効果をプラセボと比較した二重盲検の多施設RCTである「SAVOR-TIMI 53」を行ったのは、米Harvard大学医学部のBenjamin M. Scirica氏らだ。

 10年5月~11年12月に、患者の登録とランダム割り付けを実施。26カ国の788施設で、2型糖尿病で心血管イベントの既往がある40歳以上の患者、または心血管危険因子を有する55歳以上の男性または60歳以上の女性、計1万6492人をサキサグリプチン(8280人)またはプラセボ(8212人)にランダムに割り付けた。サキサグリプチンの用量は5mg/日、推算糸球体濾過量(eGFR)が50mL/分/1.73m2以下なら2.5mg/日とした。主治医には血糖降下薬を含む他の処方薬の投与、中止、用量変更を自らの判断で行うことを認めた。

 有効性と安全性に関する主要転帰評価指標は、心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性虚血性脳卒中を合わせた複合イベントに設定した。

 追跡期間の中央値は2.1年だった。サキサグリプチン群は1万6884人-年、プラセボ群は1万6761人-年追跡した。空腹時血糖は2年後の時点と治療終了時点の両方でサキサグリプチン群の方が有意に低かった(いずれもP<0.001)。HbA1c値も1年後、2年後、治療終了時の全てで差は有意だった(P<0.001)。割り付け薬以外の血糖降下薬の増量または新たな血糖降下薬の追加が行われた患者は、サキサグリプチン群で有意に少なかった(P<0.001)。

 複合イベントは、サキサグリプチン群の613人(7.3%)とプラセボ群の609人(7.2%)に発生。Kaplan-Meier法を用いて2年時点の発生率を推定したところ、いずれも100人-年当たり3.7で、プラセボに対するサキサグリプチンのハザード比は1.00(95%信頼区間0.89-1.12、優越性のP=0.99、非劣性のP<0.001)になった。割り付け薬の最後の投与から30日以内に発生したイベントもカウントするon-treatment分析でも結果は同様で、ハザード比は1.03(0.91-1.17)だった。

 2次評価指標に設定した心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建術の施行、心不全を合わせた複合イベントのハザード比も、1.02(0.94-1.11、優越性のP=0.66)と有意差はなかった。

 心不全による入院は、サキサグリプチン群の方が多かった。3.5%と2.8%で、ハザード比は1.27(1.07-1.51、P=0.007)。

 主な有害事象の発生率は同様で、低血糖による入院を経験した患者の割合にも差はなかったが、低血糖イベント、重大な低血糖イベントを経験した患者はサキサグリプチン群で有意に多かった。急性膵炎または慢性膵炎の発生率は両群間で有意差はなかった。

 今回の試験で、サキサグリプチンは虚血性イベントの発生率を低下も増加もさせないことが示された。心不全による入院率は上昇した。サキサグリプチンは血糖コントロールを改善するが、糖尿病患者の心血管リスクを低減するためには他のアプローチが必要だろうと著者らは結論付けた。

急性冠症候群の発症3カ月以内の患者の心血管有害事象を増やさない
 米Connecticut大学医学部のWilliam B. White氏らは、急性冠症候群の発症から3カ月以内で心血管リスクが非常に高い2型糖尿病患者を登録し、アログリプチンの安全性を評価するため、心血管イベントへの影響をプラセボと比較する二重盲検の多施設RCT「EXAMINE」を実施した。

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