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NEJM誌から
CTEPHとPAHへのリオシグアト投与に利益
運動能力の向上、肺血管抵抗の改善をフェーズ3臨床試験で確認

 慢性血栓塞栓性肺高血圧症CTEPH)と、肺動脈性肺高血圧症PAH)を対象に可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬リオシグアトの効果をプラセボと比較した2つのフェーズ3臨床試験で、リオシグアトの効果が示された。6分間歩行距離の延長のみならず、肺血管抵抗その他の転帰にも有意な改善が見られた。2つの試験の結果とも、独University Hospital Giessen and MarburgのHossein-Ardeschir Ghofrani氏らにより、NEJM誌2013年7月25日号に報告された。

 CTEPHは肺血管の狭窄を特徴とする。基質化した血栓により肺動脈圧が徐々に上昇し、右室不全が発生する。早期に治療を受けなければ予後不良となる。治癒が期待できる唯一の治療法が肺動脈内膜摘除術だが、全ての患者が適応となるわけではない上に、十分な効果を得られない患者が存在する。現在のところ、CTEPHを対象とする治療薬はない。

 CTEPHでは、内因性血管拡張物質である一酸化窒素(NO)の合成が阻害され、NOによる信号伝達が起こりにくくなっている。可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬のリオシグアトは、sGCを直接刺激すると同時に、sGCのNO感度を高めることにより、NO-sGC-cGMP経路を正常化する。

 CTEPHに対するフェーズ3臨床試験「CHEST-1」は、二重盲検の多施設ランダム化比較試験(RCT)として26カ国の89施設で行われた。18~80歳で、肺動脈内膜摘除術が適応にならない患者、または、同手術を受けたが症状が持続もしくは再発した患者で、6分間歩行距離が150~450m、肺血管抵抗が300dyn.sec.cm-5超、肺動脈圧の平均が25mmHg以上などの条件を満たした261人(平均年齢59歳、女性が66%)を登録し、プラセボ群(88人)もしくはリオシグアト群(173人)に割り付けた。全体の72%が手術不能の患者だった。

 リオシグアトの開始用量は1mgを1日3回とし、8週かけて、収縮期血圧または高血圧の症状を指標としながら、0.5~2.5mgの範囲内で用量を調節した。

 主要転帰評価指標は、ベースラインから16週目の終わりまでの6分間歩行距離の変化とし、modified intention-to-treat分析した。

 また、肺血管抵抗、脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)値、WHO機能分類(普通の運動では症状が出ないI度からあらゆる身体活動が苦痛となるIV度まで)、臨床的増悪、Borg呼吸困難スコア(体を動かしたときの息切れの程度、0~10で示し、ハイスコアほど深刻)、QOL(EQ-5DとLiving with Pulmonary Hypertension;LPH質問票を用いて評価)、安全性を2次評価指標とした。

 6分間歩行距離のベースラインからの変化は、リオシグアト群が平均39m延長、プラセボ群では6m短縮し、最小二乗平均の差は46m(95%信頼区間25-67、P<0.001)だった。

 肺血管抵抗はリオシグアト群で226dyn.sec. cm-5低下、プラセボ群では23dyn.sec.cm-5上昇。最小二乗平均の差は-246dyn.sec.cm-5(-303から-190、P<0.001)。リオシグアト群では、NT-proBNP値も有意に低下し、最小二乗平均の差は-444pg/mL(-843から-45、P<0.001)だった。WHO機能分類でも有意な改善効果が見られた(P=0.003)。

 臨床的な増悪を経験したのは、リオシグアト群の2%とプラセボ群の6%で、有意な差は認めなかった(P=0.17)。QOL指標のうちLPHスコアの変化にも、有意差は見られなかった。

 最も多く見られた重篤な有害事象は、右室不全(両群ともに3%が経験)と失神(リオシグアト群の2%、プラセボ群の3%に発生)だった。有害事象による治療中止はリオシグアト群5人(3%)、プラセボ群2人(2%)だった。

 リオシグアトは、CTEPH患者の運動能力を有意に改善させ、肺血管抵抗も向上した。その他の臨床転帰にも改善をもたらした。

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