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NEJM誌から
高頻度振動換気の使用にARDSの死亡減少効果なし
カナダと英国における2つのランダム化試験の結果

 呼吸窮迫症候群ARDS)の死亡率は高く、生存者も合併症に長期間悩まされることが多い。ARDS患者の生命を維持するために用いられる機械的換気には、肺損傷を引き起こす危険性がある。高頻度振動換気HFOV)はそうしたリスクを減らせるとの期待に基づいて、有効性のエビデンスが十分にないままに、使用が増えている。

 カナダと英国の研究者たちは、それぞれ別個に、通常の換気とHFOVがARDS患者の生存に及ぼす影響を比較するランダム化比較試験(RCT)を行い、死亡リスクは低減せず、逆に上昇する可能性を示唆するデータを得た。2件の研究結果はいずれも、NEJM誌電子版に2013年1月22日に報告された。

高頻度振動換気に生存へのメリットなし、死亡リスク上昇の可能性も

 近年、ARDS患者の機械的換気では、肺損傷を抑制するために一回換気量を減らし(体重1kg当たり6mLを使用するなど)、呼気終末陽圧(PEEP)のレベルをより高く設定する方法が用いられるようになっている。HFOV装置を使用する換気は、1回換気量をさらに減らして体重1kg当たり1~2mLとし、換気頻度は1秒当たり3~15回と非常に高く設定して、さらなる肺保護を目指している。

 カナダToronto大学のNiall D. Ferguson氏らは、肺保護的な通常の換気と早期からのHFOV使用による院内死亡への影響を比較する多施設RCTを行った。

 5カ国(カナダ、米国、サウジアラビア、チリ、インド)における39カ所のICUで、発症から2週間以内の中等症~重症の成人ARDS患者を登録、HFOVまたは肺保護的換気(1回換気量を低用量にし、高PEEPを用いる)のいずれかに割り付けた。主要評価指標は院内での全死因死亡に設定。

 1200人を登録する予定だったが、571人を登録し、うち548人を無作為に割り付けた時点でデータ監視委員会からの勧告を受け入れ、この試験は早期に中止された。HFOV群は275人、対照群は273人だった。HFOV群には中央値3日間(四分位範囲は2~8日)HFOVが使用された。対照群273人のうち、難治性の低酸素症を示した34人(12%)はHFOVによる治療を受けた。

 その結果、院内死亡はHFOV群47%、対照群35%で、相対リスクは1.33(95%信頼区間[CI]1.09-1.64、P=0.005)だった。集中治療室での死亡(1.45、1.17-1.81、P=0.001)、28日未満の死亡(1.41、1.12-1.79、P=0.004)の相対リスクも、HFOV群で有意に高かった。

 ベースラインの患者特性で多変量調整してもHFOV群の死亡リスクは有意に高く、ベースラインの低酸素症の重症度や呼吸器系のコンプライアンス、BMI(体格指数)などで患者を層別化して行ったサブグループ解析でも、HFOV群の死亡リスクは高かった。

 難治性の低酸素症は対照群に多く見られたが(相対リスク0.50、0.29-0.84、P=0.007)、その後の死亡リスク(1.20、0.87-1.66、P=0.31)には有意差は無かった。

 中等症~重症のARDSの成人患者に早期にHFOVを使用すると、肺保護的な換気に比べ院内での全死因死亡は減少せず、逆に増加する可能性が示唆された。

英国における多施設RCTでも同様に死亡減少効果なしの結果

 英Oxford大学のDuncan Young氏らは、HFOVによるARDS治療に関する多施設RCTを行った。これは、英National Institute for Health Research (NIHR)が、質の高いエビデンスがないままに、ARDS治療へのHFOVの使用が拡大している現状に懸念し、HFOVのARDS治療としての有効性を明らかにする研究の実施を求めたことを受けたもの。

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