日経メディカルのロゴ画像

NEJM誌から
重症外傷性脳損傷への頭蓋内圧モニタリングで転帰は改善しない
南米で行われた無作為化試験の結果

 重症の外傷性脳損傷患者に対する頭蓋内圧モニタリングは、患者の転帰改善をもたらさない――。そんな無作為化試験の結果が、米Washington大学Harborview医療センターのRandall M. Chesnut氏らにより、NEJM誌電子版に2012年12月12日に報告された。

 頭蓋内圧モニタリングは重症の外傷性脳損傷の患者に対する標準的なケアの1つと考えられており、先進国では実際に行われている。だが、これまで、頭蓋内圧モニタリングによって得られるデータに基づく治療が、患者の転帰向上に役立っているのかどうかは明らかではなかった。

 この疑問を検証するためには無作為化試験を行う必要があるが、対照群の設定の難しさが実施を妨げてきた。そこで著者らは、頭蓋内圧モニタリングが標準的に行われていない南米なら、倫理的な問題を生じさせることなく無作為化試験が可能と考え、ボリビアとエクアドルの6施設で多施設無作為化試験BEST:TRIPを行った。

 著者らはまず、「頭蓋内圧モニタリングのデータに基づく治療を行えば、6カ月時点で、死亡率は低下。神経心理学的転帰と身体機能が向上し、ICU入院期間は短縮し、合併症発生率も低下する」と仮定した。

 08年9月から11年10月まで、重症の外傷性脳損傷でICUで治療を受ける13歳以上の患者で、グラスゴーコーマスケール(GCS)が3~8(挿管されている患者ではGCSの運動機能スコアが1~5も条件とした)、または入院時はGCSが高スコアだったが外傷発生から48時間以内にGCS8以下に低下した324人を登録した。これらの患者を、頭蓋内圧モニタリングを行い、20mmHg未満を維持できるように管理する群(モニタリングあり群)、または、複数回のCTスキャンと臨床検査で得られる情報に基づく治療を従来通り実施する群(モニタリングなし群)のいずれかに割り付けた。

 主要転帰評価指標は、以下の21項目を合わせた複合イベントに設定した。生存に関する評価指標(生存期間、1項目)、意識障害に関する評価指標(指示に従えるようになるまでの時間と、退院時の見当識検査GOATの得点合計、2項目)、3カ月時の身体機能と見当識(GOS-E、DRS、GOATを用いて評価、3項目)、6カ月時の身体機能と神経心理学的状態(MMSEなどを用いて評価、15項目)。計21項目のそれぞれについて、患者ごとにパーセンタイル値を求め、それらを平均して、個々の患者のパーセンタイル値とした(レンジは0~100で、低いほど転帰不良を意味する)。

 神経心理学的状態の評価は、患者がどちらの治療に割り付けられたのかを知らない評価者が行った。

 重症の外傷性脳損傷の原因として最も多かったのは交通事故で、外傷発生から試験実施病院に入院するまでの時間の中央値は3.1時間だった。年齢の中央値は29歳(レンジは22~44歳)。脳圧モニタリング日数の中央値は3.6日(四分位範囲は2.0~6.6日)。割り付けられた患者の92%は、死亡時点または6カ月後まで追跡できた。

この記事を読んでいる人におすすめ