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NEJM誌から
TREM2多型が遅発性アルツハイマー病の発症に関係か
若年性認知症を引き起こす那須ハコラ病の原因遺伝子

 若年性認知症を引き起こす「那須ハコラ病」の原因遺伝子として知られるTREM2の機能喪失多型と、遅発性のアルツハイマー病AD)との間に、強力な関係がある――。そんな新たな知見を報告した2本の論文が、2012年11月14日付のNEJM誌電子版に同時掲載された。

 これまで、若年性アルツハイマー病に関連する遺伝子は複数報告されていたが、アルツハイマー病の大部分を占める遅発性アルツハイマー病の素因を与える変異は、アポリポ蛋白質EのアイソフォームであるE4(遺伝子型ApoE4)以外ほとんど知られていなかった。

 TREM2(Triggering receptor expressed on myeloid cells 2)は、膜貫通型の糖蛋白質で、細胞外に免疫グロブリン様のドメインを有する。マクロファージと樹状細胞に発現し、脳では、白血球の代わりに免疫防御を担うミクログリアに発現が見られる。

 TREM2は、DAP12遺伝子と共に、那須ハコラ病の原因と見なされている。那須ハコラ病は、日本とフィンランドに患者の集積が報告されているまれな劣性遺伝病で、これら2つの遺伝子のいずれかに機能喪失変異を有する患者が、この病気の特徴である多発性骨嚢胞による病的骨折と白質脳症による若年性認知症を示す。那須ハコラ病以外にも、TREM2遺伝子の機能喪失変異と認知機能の低下が関連づけられた家系が、世界のいくつかの地域で報告されている。

アイスランド住民における多型保有者のADのオッズ比は3倍
 最初の論文は、アイスランドdeCODE Genetics社のThorlakur Jonsson氏らによるものだ。著者らは、AD患者とコントロールの全ゲノム配列を比較して、ApoE4以外の、ADに関連する遺伝的多型を同定しようと考えた。

 アイスランド住民2261人の全ゲノムの配列を調べて、計19万1777の変異を同定した。それらの中から、AD患者とADではない人々(コントロール)が保有する、蛋白質の機能に影響を及ぼすと考えられる変異を比較し、既知のApoE4やアミロイド前駆体蛋白(APP)のA673T変異以外で、ADと強力な関係を示す変異を探した。

 その結果、TREM2遺伝子上に存在する、まれなミスセンス変異(DNA配列の変化によりアミノ酸の置換が生じる)を引き起こす多型(rs75932628;R47H=47番目のアミノ酸がアルギニンからヒスチジンに置換されると予測される)が、ADリスクの上昇に関係することが明らかになった。オッズ比は2.92(95%信頼区間2.09-4.09、P=3.42×10-10)になった。

 85歳以上で認知機能が正常な人々をコントロールとしてAD患者と比較した場合、この多型を持つ人のADのオッズ比は4.66(2.38-9.14、P=7.39×10-6)になった。

 アイスランド住民では、この多型の対立遺伝子頻度は0.63%だった。コントロールのうち、85歳以上の人々では0.46%、85歳未満の人々では0.64%で、85歳以上で認知機能に低下が見られない人々における対立遺伝子頻度は0.31%と特に低かった。

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