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NEJM誌から
大腸癌へのアスピリンで生存利益があるのはPIK3CA変異型のみ

 大腸癌診断後のアスピリン使用は、PIK3CA変異型の患者には生存利益をもたらすが、PIK3CA野生型患者には生存利益をもたらさない可能性が、米Dana-Farber癌研究所のXiaoyun Liao氏らの研究で示された。論文は、NEJM誌2012年10月25日号に掲載された。

 数多くの研究によって、大腸癌診断後のアスピリンの日常的な使用は転帰良好と関連づけられてきた。だが、大腸癌は均一な疾患ではないため、アスピリンに反応する患者とそうでない患者がいる可能性がある。既に、アスピリンの生存利益は腫瘍におけるプロスタグランジンエンドペルオキシド合成酵素2(PTGS2)(=シクロオキシゲナーゼ-2;COX-2)の発現レベルによって異なることも示されていたが、PTGS2の発現量を調べる標準的な検査は現時点ではないことから、大腸癌患者の中からアスピリンの利益が期待できる人々を選出するためのより簡便なマーカーが求められていた。

 これまでに得られた実験的なエビデンスでは、アスピリンがPTGS2を阻害し、これによりホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)信号伝達経路を抑制することが示唆されている。PI3Kの活性化が起こると、大腸癌細胞のアポトーシスが阻害されることも知られている。したがってアスピリンは、PI3Kの活性化を阻止することにより、大腸癌細胞の増殖を抑制、さらにアポトーシスを誘導すると考えられる。

 一方で、大腸癌患者の15~20%が、PI3K信号伝達にかかわるPIK3CA(ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸3-キナーゼの触媒サブユニットα)遺伝子に変異を有するという報告もある。著者らは、PIK3CAの変異の有無が、大腸癌患者の生存と予後に対するアスピリンの作用に影響を及ぼすと仮定し、これを検証した。

 米国で行われた2件の大規模前向きコホート研究、Nurses’ Health Study(1976年に登録を開始し12万1700人の女性を登録)とHealth Professionals Follow-up Study(1986年に登録を開始し5万1500人の男性を登録)に登録され、その後に結腸癌または直腸癌と診断された人々のデータを得た。

 大腸癌診断後のアスピリン使用状況とPIK3CA遺伝子の変異の有無(パラフィン包埋組織からDNAを抽出、PCRとパイロシーケンシングにより変異の有無を同定)に関する情報を得られた964人を分析対象にした。これらの患者を、死亡または2011年1月まで追跡した。

 964人のうち44%が男性で、診断時期が1997年以降だった患者は56%だった。追跡期間の中央値は153カ月で、追跡期間中の死亡は395人、うち190人が大腸癌関連死亡だった。

 PIK3CA変異型の患者は全体の17%(161人)を占めていた。変異型の大腸癌患者では、診断後のアスピリンの日常的な使用が大腸癌特異的死亡リスクの低下に関係していた。変異型患者のうち、アスピリンを常用していなかった患者は95人で、うち26人が大腸癌で死亡。一方、アスピリンを常用していた66人では大腸癌死亡は3人にとどまり、大腸癌関連死亡の多変量調整ハザード比は0.18(95%信頼区間0.06-0.61、ログランク検定のP<0.001)になった。変異型患者に見られた大腸癌死亡リスク低減はアスピリンの用量に関係なく一貫して認められた。

 一方、PIK3CA野生型患者では、診断後のアスピリン使用は大腸癌死亡リスクの低減に関係していなかった(ハザード比0.96、0.69-1.32、P=0.76)。

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