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NEJM誌から
胸膜中皮腫の診断にフィブリン-3が有用
アスベスト曝露歴のある人々の中から中皮腫を高精度に識別

 血漿中と胸水中のフィブリン-3値が、アスベスト曝露歴のある人々における胸膜中皮腫の早期診断などに役立つことが、米New York大学のHarvey I. Pass氏らの研究で明らかになった。論文は、NEJM誌2012年10月11日号に掲載された。

 胸膜中皮腫に対する外科治療、化学療法や放射線治療は進歩しているが、いまだに生存期間の中央値は12カ月に留まる。早期段階での画像診断は難しく、既存のバイオマーカーであるメソテリン関連蛋白とオステオポンチンは、診断ツールとしての期待に応えるレベルには至っていない。

 著者らは、胸膜中皮腫の早期発見に役立つ新たなバイオマーカーを見つけるため、37人の中皮腫患者から手術の際に得られた中皮腫の細胞と腹膜組織の細胞(正常細胞)から全RNAを抽出し、悪性細胞と正常細胞の間で発現量の差が大きい遺伝子を調べた。正常細胞に比べ悪性細胞での発現が7.36倍と最も差が大きかったのが、フィブリン-3をコードするEFEMP1遺伝子だった。

 そこで著者らは、血漿中と胸水中のフィブリン-3が診断マーカーとして使用できるレベルの感度と特異度を持っているかどうかを調べることにした。

 血漿と胸水は、1998~2005年にWayne州立大学で採取されたサンプル(デトロイトコホート)と、2005~11年にNew York大学Langone医療センターで採取されたサンプル(ニューヨークコホート)を用いた。デトロイトコホートのうち78人が中皮腫だった。うち37人から血漿が、41人から胸水が得られた。ニューヨークコホートでは64人が中皮腫で、55人から血漿が、33人から胸水が得られた。

 両コホートを合わせると、酵素免疫測定(ELISA)法により血漿フィブリン-3値が得られたのは、中皮腫患者92人、アスベスト曝露はあるが癌ではない136人、胸水はあるが中皮腫由来ではない93人、健康な人々(対照群)43人だった。胸水中のフィブリン-3値が測定できたのは、中皮腫患者74人、良性胸水が見られる39人、悪性腫瘍由来だが中皮腫に起因しない胸水が見られる54人だった。

 血漿フィブリン-3値には、年齢、性別、アスベスト曝露期間、X線画像上の変化の程度による差は見られず、中皮腫患者を腫瘍の組織学的分類によって層別化しても差はなかった。中皮腫の病期(ステージIまたはIIと、ステージIIIまたはIV)で層別化しても、有意な差は認められなかった。

 だが、アスベスト曝露があるが中皮腫ではない人々に比べ、胸膜中皮腫患者の血漿フィブリン-3値は有意に高かった。デトロイトコホートの中皮腫患者では105.0±7.1ng/mL、ニューヨークコホートの中皮腫患者では112.9±7.6ng/mL(コホート間に有意差なし、P=0.63)。アスベスト曝露歴があるが中皮腫ではない人々では、それぞれ13.9±1.2ng/mLと24.3±1.4ng/mLだった(いずれも同じコホートの中皮腫患者との差は有意で、P<0.001)。

 中皮腫で術前に化学療法を受けた人々と、それ以外の中皮腫患者の血漿フィブリン-3値を比較したが、有意な差は見られなかった(P=0.12)。一方、外科的切除を受けた18人の患者では、術後に血漿フィブリン-3が低下し、その後進行が見られた6人のフィブリン-3値は再上昇する傾向を示した。

 胸水中のフィブリン-3値も血漿フィブリン-3の場合と同様の傾向を示したが、測定値は血漿中の値より高かった。デトロイトコホートの中皮腫患者では694.4±36.8ng/mL、ニューヨークコホートの中皮腫患者は636.4±92.1ng/mL。中皮腫由来ではない胸水が見られる患者では、それぞれ211.5±25.1ng/mLと150.6±22.7ng/mL(いずれも同じコホートの中皮腫患者との差は有意、P<0.001)だった。

 中皮腫以外の原因による胸水を、良性のものと悪性腫瘍由来に分けると、デトロイトコホートの良性胸水のフィブリン-3値は242.3±34.5ng/mL、悪性腫瘍由来は181.8±36.1ng/mL、ニューヨークコホートではそれぞれ142.2±35.6ng/mLと159.7±28.9ng/mLだった。

 ROC曲線を描いて、血漿フィブリン-3値を指標に中皮腫患者とそうでない人々を識別できるかどうか調べた。

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