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NEJM誌から
淋菌の多剤耐性化が急速に進行
CDCが現時点の推奨治療と今後の課題を示す

 淋菌抗菌薬耐性の獲得が進み、近い将来、治療の選択肢がなくなるのではないかという不安が高まっている。米疾病管理予防センター(CDC)のGail A. Bolan氏らは、NEJM誌2012年2月9日号のPerspectiveで、淋菌の抗菌薬耐性獲得状況について解説、推奨される治療を示すとともに、医療従事者や公衆衛生担当者などが速やかに取り組むべき課題について述べている。

 先進国における淋病の罹患率はいまだに高い。病原体であるNeisseria gonorrhoeaeは、抗菌薬耐性を容易に獲得してきた。1940年代にはスルファニルアミドに対する耐性、1980年代にはペニシリンテトラサイクリンに対する耐性、07年にはフルオロキノロンに対する耐性を獲得している。多剤耐性化の進行に伴い治療の選択肢は限定されつつあり、CDCは現在、第3世代セファロスポリンの使用を推奨している。しかし、いまやセファロスポリンに対する感受性も急速に低下している。

 淋菌の薬剤耐性をモニターする目的で1987年に発足したGonococcal Isolate Surveillance Project(以下GISP)の調査によると、第3世代セファロスポリンであるセフィキシムに対する耐性(最小発育阻止濃度〔MIC〕が0.25μg/mL以上)を示す淋菌の割合は、06年には米国内の分離株の0.1%だったが、11年前半には1.7%に増加していた。耐性菌の増加は米国の西部で顕著(0.2%から3.6%)で、男性同性愛者で最も深刻だった(0.2%から4.7%)。

 やはり第3世代セファロスポリンであるセフトリアキソンに耐性(MIC 0.25μg/mL以上)を示す分離株は、11年前半には1件のみだったが、MIC 0.125μg/mL以上の低感受性を示す分離株は、06年が0.05%、11年前半には0.5%と急増していた。やはり米国西部(0.04%から1.9%)と男性同性愛者(0%から1.0%)で増加は顕著だった。

 セフィキシムに対する感受性の低下は、世界に先駆けて日本で03年に報告された。10年にはノルウェーと米国でも見つかっている。

 耐性獲得の歴史の中で専門家たちが警戒感を募らせる大きなきっかけになったのが、09年に京都で女性患者の咽頭から分離されたセフトリアキソン高度耐性(MIC 2.0~4.0μg/mL)淋菌株だ。この株はそれ以前に見つかっていたセフィキシム耐性株と近縁だったが、新たな遺伝子(penAモザイク)を保有していた。この株の感染拡大は見られなかったことから、病原性はさほど強くないと考えられているが、こうした株はいずれ感染力を獲得すると予想されている。

 著者らは、「現在のところ、第3世代のセファロスポリンは、米国で分離される多くの淋菌株に有効だが、セファロスポリン耐性淋菌の感染の拡がりを阻止し、転帰不良を減らすためには、医療従事者、公衆衛生担当者、研究者たちが協力して、淋菌対策の再構築に取り組まねばならない」とした上で、以下の内容を訴えている。

・臨床医は、すべての症例に対して最も有効なレジメンを選択する必要がある。性器と性器外の病変には、250mgのセフトリアキソン筋注が最も有効だ。加えて、共感染している病原体をコントロールし、淋菌には別方向からの抗菌効果を加えるために、1gのアジスロマイシンを経口投与する。

ドキシサイクリンはあまり好ましくない。現在のところ、セフィキシムに対する感受性が低下している淋菌株はテトラサイクリン耐性も獲得しているからだ。

・セフィキシムの経口投与は、セフトリアキソンが適用できない場合のために温存しておくべき。

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