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NEJM誌から
市民ランナーの心停止、「男性」「フルマラソン」がハイリスク
2005年以降の発生率は大きく上昇

 一般市民が参加するフルマラソンハーフマラソンなどの長距離レース中の心停止の発生率は、参加者10万人当たり0.54で、うち7割が死亡。「男性」「フルマラソン」がハイリスクで、死因として最も多いのは肥大型心筋症。生存の予測因子は目撃者による心肺蘇生開始―。そんなデータが、米Harvard大学医学部のJonathan H. Kim氏らが行ったRACER研究で得られ、NEJM誌2012年1月12日号に掲載された。

 米国でも、マラソンなどの長距離走レースに参加する一般市民が増えている。2010年には約200万人の市民がフルマラソンまたはハーフマラソンに参加したと推算されている。参加者が増えた理由の1つは、定期的な運動による健康増進に関心が集まっていることだと考えられるが、一方で、レース後の心機能の異常やレース中の心停止の報告が増えており、競技会開催の安全性について議論されるようになった。

 若いスポーツ選手の突然死については様々な分析が行われてきたが、そこで得られたデータを、より年齢の高い市民ランナーに適用することはできない。しかし、これまで、長距離レース中に発生した市民ランナーの心停止例を集めて臨床的特徴を調べた研究はなかった。

 著者らは2000年1月1日から2010年3月31日までに開催されたフルマラソンとハーフマラソンの参加者の、レース中またはゴール後1時間以内の心停止の発生率と転帰を後ろ向きに調べた。心停止後の生存者には面接調査を行い、人口統計学的特徴、ランニングその他の運動の経験、本人と家族の医療歴などの情報を収集し、医療記録も分析した。死亡例については、近親者に対する面接と、医療記録、剖検データの分析を行った。

 レース参加者1090万人のうち、59人(平均年齢42±13歳、86%が男性)が心停止を起こしていた。40人がフルマラソン、19人がハーフマラソン参加者だった。心停止の発生率は参加者10万人当たり0.54(95%信頼区間0.41-0.70)だった。

 心停止発生率は、ハーフマラソンに比べてフルマラソンの方が有意に高かった。10万人当たり0.27(0.17-0.43)と1.01(0.72-1.38)で、P<0.001。また、女性より男性に多かった。10万人当たり0.16(0.07-0.31)と0.90(0.67-1.18)で、P<0.001。

 ハイリスクの組み合わせと考えられた男性のフルマラソン参加者の心停止発生率は、10万人当たり1.41(0.98-1.97)で、00~04年は10万人当たり0.71(0.31-1.40)、05~10年は2.03(1.33-2.98)と、大きく上昇していた(P=0.01)。

 心停止を起こした59人のうち、42人(71%、10万人当たり0.39、0.28-0.52)が死亡した。死亡者の平均年齢は39±9歳、生存者の平均年齢は49±10歳だった(P=0.002)。死亡もまた、ハーフマラソン参加者よりフルマラソン参加者に多く(10万人当たり0.25〔0.14-0.36〕と0.63〔0.41-0.93〕)、女性より男性に多かった(10万人当たり0.14〔0.06-0.29〕と0.62〔0.43-0.86〕)。

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