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NEJM誌から
2009H1N1の重要ポイントをWHOが概説
ウイルス学的、疫学的、臨床的側面をレビュー

 2009年春にメキシコで流行が始まり、6月にはパンデミック宣言がなされるに至った新型インフルエンザ2009H1N1)のウイルス学的、疫学的、臨床的特徴をWHOが概説した論文が、NEJM誌2010年5月6日号に掲載された。

 この論文は、WHO Consultation on Clinical Aspects of Pandemic (H1N1) 2009 Influenzaのメンバーである米Virginia Health System大学のFrederick G. Hayden氏らが執筆した。2009H1N1ウイルス感染にかかわる様々なデータをレビューし、世界の臨床医にとって重要なポイントについて解説している。

●ウイルスの特性
 これまでに分離された2009H1N1株は、ほぼ全て、ワクチン製造用として選出されたA/California/7/2009と同一だった。2009H1N1と既知のヒトインフルエンザウイルスの再集合体はこれまでのところ見付かっておらず、高病原性を付与する変異も認められていない。

●疫学
 2009H1N1感染のほとんどは急性の自己限定性の疾患で、感染率は小児と若年成人で高かった。

 ある寄宿学校では、感染しても3人に1人が発症しなかったとの報告がある。

 Pittsburghで第2波襲来後に行われたHI抗体価測定の結果は、全住民の21%、10~19歳においては45%が既に感染したことを示唆した。

 全体では致死率は0.5%未満だが、推定の範囲は0.0004%から1.47%まで幅広かった。理由の1つは、死因の判定基準や感染者総数の推定法が異なることにあると考えられた。2009H1N1による死者の約90%は65歳未満の人々だった。

 入院率も国によって大きく異なっていた。米国では入院患者の死亡率は50歳以上が最も高く、小児で最も低かった。

 ヒト-ヒト感染の機序は季節性インフルエンザと同様と考えられている。家庭内感染が最も発生しやすかったのは小児で、発生が最も少なかったのは50歳以上の成人だった。

 集団感染の多くは、学校、託児施設、キャンプ、病院などで発生しており、基本再生産数(R0)は1.3から1.7だった。だが、生徒の多い学校では3.0から3.6に上昇する可能性が示されている。

 2009H1N1感染により入院または死亡した患者のうち、4分の1から半数は基礎疾患を有していなかった。肥満者と妊婦、特に妊娠後期の女性の入院または死亡リスクは高かった。

●病理
 2009H1N1感染者の鼻咽腔でのウイルスの増殖は、季節性のウイルスより長期間続くことが示唆されている。小児では解熱から最長6日間に渡って感染性のあるウイルスが検出された。鼻咽腔のウイルス量は、重症肺炎の患者で特に多く、その状態が長く続いた。挿管が行われた患者では、ウイルスRNA量は上気道より下気道で高く、下気道からの分泌物には最長28日までウイルスRNAが検出される可能性がある。

 まれではあるが、感染性のウイルスが患者の便、血液、尿から検出されることもある。

 死亡例に一貫して見られた組織病理学的所見は、硝子膜形成と隔壁の水腫を伴うびまん性肺胞損傷、気管支炎、壊死性細気管支炎など。それ以外に、肺うっ血、肺胞出血なども見られた。

 感染細胞は、上気道と気管気管支の上皮、粘液腺以外に、タイプIとタイプIIの肺胞細胞にも局在していた。

 死亡例の26~38%に、細菌の共感染がある気管支肺炎が見られた。

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