肺癌ハイリスク者を対象とするスクリーニングにマルチスライスCTが用いられるようになり、非石灰化肺結節が発見される機会が増加した。オランダErasmus Medical CenterのRob J. van Klaveren氏らは、非石灰化肺結節が検出された場合に用いる安価でシンプル、かつ偽陽性率を高めることのない診断戦略を提案し、NEJM誌2009年12月3日号に報告した。
現時点では、非石灰化肺結節の直径が5mmを超える場合は、別の方法で検査を行うことが推奨されている。著者らは、結節の体積と体積倍加時間を指標とする方法を提案し、実際にこの戦略を用いて肺癌スクリーニングを行って、感度と特異度、陽性的中率、陰性的中率を評価した。
著者らが考案した方法は以下の通り。
既存の良性病変の定義を満たさないものを非石灰化肺結節に分類。判断の対象は、見付かった充実性結節のうち、体積が最大の結節または増大が最も早い結節とし、結節の体積または体積倍加時間を測定するソフトウエアを用いる。
検査で見付かった充実性結節の体積が50mm3未満(直径4.6mm未満)なら陰性、500mm3超(直径9.8mm超)であれば陽性と判定した。
充実性結節の体積(部分的に充実性の場合は充実性部分の体積)が50~500mm3(直径4.6~9.8mm)、または非充実性結節で直径が8mm超の場合は、判断を延期する。3カ月後に再度スキャンを行って結節の増大を調べ、体積倍加時間が400日未満であれば陽性と判定。それ以外は陰性と判断する。
陽性の患者は専門医に紹介し、精密検査と診断を依頼する。
2回目のスクリーニングで新たな結節が発見された場合には、初回と同様の基準で陽性か陰性かを判定する。判断を延期した場合には6週後に再スキャンを行い、体積倍加時間が600日超なら陰性、400日未満なら陽性と判定する。また、前回は非充実性結節だった部分に充実性結節が現れた場合も陽性とする。なお、再スキャンで倍加時間が400~600日だった症例については、判断はさらに先送りし、1年後に再スキャンを実施。倍加時間が400日未満なら陽性、それ以外なら陰性と判断する。
なお、初回または2回目のスキャンニングでの陽性判定から1年以内に診断された癌を、スクリーニングによって発見された肺癌とした。スクリーニングで陰性判定を受けて1年以内の肺癌診断はインターバル癌(すなわち偽陰性)に分類した。
今回の分析対象は、無作為化試験NELSONの登録患者から選んだ。この試験は、肺癌リスクの高い人々をCTスクリーニングありとなしに割り付けて10年間追跡し、肺癌死亡率を比較する目的で行われている。今回はCTスクリーニングあり群に割り付けられた7557人を分析した。
NELSONでは、1mm厚16列CTスキャナーを用いて、ベースラインに初回のCT検査を、1年後に2回目、3年後に3回目のスクリーニングを行った。
登録者の平均年齢は59歳、女性が16%で、平均喫煙本数は42箱-年だった。
海外論文ピックアップ NEJM誌より
NEJM誌から
マルチスライスCTで検出された非石灰化結節をどうする?
体積と体積倍加時間を指標とする判定法を提案
2009/12/22
大西 淳子=医学ジャーナリスト
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