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NEJM誌エディトリアルから
いずれの試験もPSAスクリーニングのリスクを示した

 NEJM誌2009年3月26日号に、PSA値を指標とする前立腺癌スクリーニングは前立腺癌による死亡を減らさないとする米国の研究結果(PLCO試験、関連記事はこちら)と、前立腺癌死亡の相対リスクはスクリーニング群で20%低いとする欧州での研究結果(ERSPC試験、関連記事はこちら)が同時掲載された。

 相反する結果の裏には、試験設計の差が存在する。だが、いずれの結果も、スクリーニングが受検者に、過剰診断と過剰治療を中心とする「害」を与える危険性を示したと言える。

 これらの論文を取り上げたエディトリアルで、米国Harvard 大学医学部のMichael J. Barry氏は「現時点で、このレベルの過剰診断、過剰治療を容認できるかどうかは個人の考え方によるだろう。したがって、多くのガイドラインに示されているように、患者と担当医が最新の情報をもとに十分に話し合って意志決定を行う方法が適切と考えられる」と述べている。

 米国では50歳以上の男性の泌尿器科医の95%、プライマリケア医の78%がPSA検査を受けているという。多くの治療ガイドラインが、PSAスクリーニングの利益を示す確かなエビデンスはないこと、過剰診断、過剰治療といった副作用が想定されることを記述しているにもかかわらず、医師自身がスクリーニングは有益と考えていることは明らかだ。

 米国における前立腺癌の死亡率は、PSA検査が導入されて5年後の1992年以降低下しているが、ここにもスクリーニングが貢献していると見なされがちだ。

 質の高い無作為化研究により前立腺癌による死亡とスクリーニングの関係を明らかにする試みは、現在も進行中のPLCOとERSPC以外にも行われている(米国のPIVOT試験、英国のPROTECT試験など)。情報の蓄積が待たれる。

 さて、PLCO試験は約11年の追跡で前立腺癌死亡に対する利益なし、ERSPC試験は約9年の追跡で相対リスクの20%減少を報告したが、いずれも中間解析結果だ。なぜこの時期に予備的な分析結果が報告されたのか。

 ERSPCについては、すでに2回中間解析結果が報告されており、今回は3回目の定期的なデータ公表と考えることができる。しかしPLCOについては、Barry氏は、スクリーニングには利益がないうえにリスクを示すエビデンスが蓄積されつつあるから、つまり注意を喚起するためではないかと考えている。

 主要な結果が相反するものだった理由としては、これらの試験の設計に大きな差があったことが第一に挙げられる。

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