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NEJM誌から
ワルファリンの至適用量をSNPsに基づき推定
新たな薬理遺伝学的アルゴリズムの有用性示される

 ワルファリンは世界で最も多く使用されている抗凝固薬だが、適切な用量の推定は難しい。誤った用量を投与すれば有害事象は高率に発生する。

 そこで、国際ワルファリン薬理遺伝学コンソーシアムの研究者たちは、臨床情報に加えて一塩基多型(SNPs)に関する情報も組み込んだ用量推定アルゴリズムを新たに作製し、検証した。得られた結果は、最適な用量がより低い患者とより高い患者の予測において、新たなアルゴリズムの有用性が高いことを示した。詳細は、NEJM誌2009年2月19日号に報告された。

 近年、ビタミンK依存性凝固たんぱく質の生成に関与するビタミンKエポキシド還元酵素複合体1サブユニット(VKORC1)遺伝子とチトクロームP450 2C9(CYP2C9)遺伝子中の一塩基多型(SNPs)が、ワルファリンの代謝能力に個人差をもたらすことが明らかになった。

 米食品医薬品局(FDA)は2007年、ワルファリンの添付文書に、これら2つの多型に関する記載を追加した。しかし、個々の患者の用量を推定する方法は示されなかった。

 これら多型の存在を調べる方法は既に確立されている。それを患者一人ひとりに適した用量の推定に用いる方法も開発されてきたが、多様かつ大規模な集団を対象に有用性が示された用量推定法はこれまでなかった。

 国際ワルファリン薬理遺伝学コンソーシアムは、世界各国の医療機関が保有する患者の臨床情報と遺伝学的データを利用して新たな用量推定アルゴリズムを作製し、その能力が臨床情報のみに基づくアルゴリズムに優るかどうかを調べた。

 コンソーシアムは9カ国の21の研究グループからなる。研究者たちは計5700人の患者の臨床的、遺伝的データを提供した。今回は、国際標準化比(INR)が2.0~3.0の5052人を分析対象とした。うち860人分のデータは日本で収集されたものだった。

 これらの患者について、ワルファリン治療との関係が示されている以下のような臨床要因に関する情報を抽出した。人口統計学的情報(年齢、身長、体重、人種など)、ワルファリンの適応症、維持用量、維持用量で達成されたINR、INRの目標域、INRを上昇させる薬剤の併用、INRを低下させる薬剤の併用など。

 加えて、以下の多型に関するデータを収集した:CYP2C9(*1、*2、*3)とVKORC1の7個のSNPs(rs9923231、rs9934438、rs2884737、rs8050894、rs7294、rs2359612、rs17880887)。

 アウトカム変数はワルファリンの維持用量(その用量を用いている間は、INRにおいて安定した抗凝固作用が得られる)とした。

 最初に、21施設のすべてから無作為に80%の患者(4043人)を選び、それらの患者に由来する情報をもとに、臨床的な変数のみからなる臨床的アルゴリズムと、そこに多型に関する変数を組み込んだ薬理遺伝学的アルゴリズムを作製した。次に、それらアルゴリズムの能力を、残った20%(1009人)を確認コホートとして比較。その際、用量調整アプローチの一つとして固定用量モデル(5mg/日を用いる)も比較の対象にした。

 いずれのコホートでも、ワルファリンの用量の中央値は28.0mg/週だった。

 アルゴリズムの予想能力の評価には、平均絶対誤差(予測された用量と実際の維持用量の絶対差の平均)を用いた。臨床的な有用性は、推定された用量と実際に用いられた維持用量の差が20%未満(たとえば実際の用量が5mg/日の患者では、推定用量との差が1mg未満だった場合がこれに該当する)の患者の割合を比較することにより評価した。

 アルゴリズムの能力は、ワルファリンの維持用量が低いグループ(21mg/週以下)、中用量のグループ(21mg/週超~49mg/週未満)、高いグループ(49mg/週以上)に患者を層別化して評価した。固定用量アプローチの場合、開始用量は35mg/週(5mg/日)であるため、低用量グループの患者にとっては危険になりうる。逆に高用量グループの患者には十分な抗凝固作用が見られない可能性がある。

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