院外心停止者の生存率は10%を下回る。これをなんとか改善できないかと考えたドイツCologne大学のBernd W. Bottiger氏らは、心肺蘇生中にテネクテプラーゼを投与する治療の利益とリスクを調べる無作為化試験を実施した。しかし、すべての評価指標において利益は示されず、頭蓋内出血が有意に増加した。詳細は、NEJM誌2008年12月18日号に報告された。
院外心停止の約70%は、急性心筋梗塞または肺塞栓が原因だ。さらに、心停止自体が全身性の血液凝固を引き起こす。
これまでに、心肺蘇生時の血栓溶解療法が脳の微小循環の回復に役立つ可能性が示されていた。実際に多くの患者にこうした効果が見られるなら、血栓溶解療法は生存率、神経回復を向上させるだろう。これを確認するための複数の研究が既に行われたが、一貫した結果は得られていない。また、心肺蘇生時の血栓溶解療法が出血リスクを高めるかどうかも明らかではなかった。
そこで著者らは、心肺蘇生時の血栓溶解療法により生存率が改善する可能性について検証する多施設二重盲検無作為化試験を行った。
オーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイスの66カ所の救急医療サービス(EMS)システムで、2004年1月24日から患者登録を開始。
対象は、目撃者があった、心原性と見られる院外心停止例で、発生から10分以内に一次救命処置(BLS)または二次救命処置(ALS)が開始された成人患者。
EMSセンターから派遣されるモバイルICU(ALSのための機材を備えた救急車)のスタッフが、この試験のプロトコロルに沿って登録条件を満たす患者かどうかを判定。登録された患者は、テネクテプラーゼまたは偽薬に無作為に割り付け、モバイルICU内で心肺蘇生の最中に割り付け薬を静注した。テネクテプラーゼの用量は、体重60kg未満の患者には30mg、60~69kgには35mg、70~79kgには40mg、80~89kgには45mg、90kg以上なら50mgとした。
アスピリンまたはヘパリンの投与は許可しなかった。
主要エンドポイントは30日生存率、2次エンドポイントは入院、心拍再開、24時間生存率、生存退院、生存患者の神経学的転帰(脳の機能良好がスコア1、脳死はスコア5として評価)に設定。
安全性の評価は、症候性頭蓋内出血または大出血、退院または30日目までのすべての合併症とした。
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