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NEJM誌から
イルベサルタンは拡張不全型の心不全の予後を改善せず
国際的な大規模試験I-PRESERVEの結果

 心不全患者の約半数が、左室駆出分画(LVEF)低下を伴わない、いわゆる拡張不全型の心不全だ。アンジオテンシンII受容体拮抗薬ARB)であるイルベサルタンが、それらの患者の予後の改善に役立つのではないかと考えた米California大学San Francisco校のBarry M. Massie氏らは、国際的な大規模無作為化試験I-PRESERVEを行った。しかし、評価されたすべての指標において、偽薬群との間に有意差を見いだせなかった。詳細は、NEJM誌電子版に2008年11月11日に報告された。

 左室駆出分画(LVEF)が45%以上と、収縮機能が保持されている心不全患者は、LVEFが低下している心不全患者に比べ、より高齢で女性が多いという特徴を持つ。さらに、虚血よりも高血圧に起因する心不全が多い。

 こうした拡張不全型の心不全患者の死亡率と合併症罹患率は高い。にもかかわらず、予後を改善できることが示されている薬物療法はなく、積極的な治療は行われにくい。

 近年、これらの患者に対して、レニン-アンジオテンシン系阻害薬が利益をもたらすのではないかと考えられてきた。拡張不全型の心不全に関わる高血圧、左室肥大、心筋線維化、血管機能不全などにおいて、この系が役割を果たすことが知られているからだ。実際に、拡張不全型の心不全患者では、心不全でない人々に比べて血漿レニン活性が上昇している。また、拡張不全型の心不全リスクの上昇が疑われる心筋梗塞後の患者や高血圧患者、特定の血管疾患患者には、レニン-アンジオテンシン系阻害薬が有益であるとの報告がある。

 そこで著者らは、こうした心不全患者にイルベサルタンを投与し、死亡率と心血管合併症に対する影響を調べるI-PRESERVE(Irbesartan in Heart Failure with Preserved Systolic Function)試験を実施した。

 2002年6月から2005年4月まで、西欧、東欧、北米、南米、南アフリカ、オーストラリアの25カ国293施設で、4128人の患者を登録した。登録条件は、60歳以上で心不全の症状があり、LVEFが45%以上、NYHA分類がII、III、IV度の心不全で過去6カ月間に入院歴がある、または、入院歴はないがNYHA分類がIIIまたはIV度の症状を示し、肺うっ血、左室肥大、左房拡大、左脚ブロックなどが認められる患者とした。

 除外基準は、ARB不忍容、過去にLVEF40%未満が記録されている患者、過去3カ月間に急性冠症候群、血行再建術、脳卒中を経験した患者、降圧薬使用下で収縮期血圧が160mmHg超または拡張期血圧が95mmHgなど。

 無作為に、2061人(LVEFの平均は60%)を偽薬に、2067人(LVEFの平均は59%)をイルベサルタン300mg/日に割り付けた。イルベサルタンの開始用量は75mg/日とし、1~2週間で150mg/日に増量、その後1~2週間のうちに300mg/日まで増量した。

 主要アウトカム評価指標は、全死因死亡、または、心血管イベント(心不全、心筋梗塞、不安定狭心症、不整脈、脳卒中)による入院を合わせた複合イベントに設定。2次評価指標は、致死的心不全または心不全による入院、全死因死亡、心血管死亡、QOLなどとし、分析はintention-to-treatで行った。

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