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NEJM誌から
エゼチミブは本当に癌罹患リスクを増やすのか
SEAS試験では有意、他の2件では認められず

 大動脈弁狭窄症の患者にスタチンエゼチミブを投与したSEAS試験では、介入群において罹患リスクの有意な上昇が見られた。そこで、英Oxford大学のRichard Peto氏らが、現在進行中の別の2件の臨床試験の中間結果のデータを用いて新たに検証したところ、介入群に癌罹患率の上昇は見られないことが明らかになった。 

 SEAS試験を合わせた3件の臨床試験において、割り付け後に癌を発症し、追跡期間中に死亡した患者に限って対照群と比較すると、エゼチミブ群の癌死亡リスク上昇は有意になったが、著者らはこの結果は偶然によるものと見ている。詳細は、NEJM誌2008年9月25日号に報告された。

 スタチン系薬剤によるLDLコレステロール低下治療が、心血管イベントを予防することを示す研究結果は数多く報告されている。Cholesterol Treatment Trialistが9万人超を対象に行ったメタ分析では、LDLコレステロール値が40mg/dL低下するごとに、心血管イベントの相対リスクが21%低下した。

 一方、スタチンを用いた臨床試験のいくつかは、特定の年齢群で、また、特定の癌について、追跡期間中の癌リスクが有意に上昇したと報告している。しかし、上記のメタ分析で、割り付け後に癌と診断された5614人について分析した結果は、スタチン治療による癌リスク上昇を示さなかった(リスク比1.00、95%信頼区間0.95-1.04)。コレステロール値がより低いグループ、スタチン投与期間がより長いグループについて評価した場合にも、癌罹患リスク上昇は見られなかった。メタ分析では、癌死亡もリスク比1.01(0.91-1.12)で有意差はなかった。

 ところが、SEAS試験の結果は、スタチンに加えてエゼチミブを投与すると、癌罹患率が上昇する可能性を示した。エゼチミブ群944人と偽薬群929人のうち、割り付け後に新たに癌を発症した患者はそれぞれ101人と65人で、リスク比は1.55(p=0.006)となった。だが、95%信頼区間は1.13-2.12、99%信頼区間は1.02-2.33と幅広いことから、この予期せぬ結果について、より大規模な別のデータを用いた検証をまず行うべき、と考えられた。

 現在、SEAS試験と同様のレジメンを用いて、より多くの患者を対象に進行している臨床試験は、SHARP試験とIMPROVE-IT試験の2つ。両試験の主任研究者たちは、2008年7月に明らかになったSEAS試験の予備的結果を見て、(1)有害事象として癌が増えるなら、薬剤の代謝や作用機序にかかわる特定の部位の癌のみが偽薬群に比べ有意な増加を示すはず(2)追跡期間が長くなるほど罹患者が増えるはず――と考えた。しかし実際にはSEAS試験でそうした現象は見られなかったことから、このリスク上昇は偶然によるものではないかと考えた。

 そこで著者らは、両試験の中間結果の中から癌に関するデータのみを抽出し、癌リスクについて分析した。

 SEAS試験では、大動脈弁狭窄のある患者1873人が無作為にエゼチミブ10mg/日+シンバスタチン40mg/日群、または偽薬群に割り付けられた。登録は2001~2004年に、追跡は2008年まで行われた(平均追跡期間4.1年)。患者の年齢はベースラインで45~85歳、61%が男性だった。

 一方、SHARP試験は、慢性腎疾患患者9264人を2003~2007年に登録、無作為にエゼチミブ10mg/日+シンバスタチン20mg/日群または偽薬群に割り付けた。今回分析用として用いられたのは2008年7月までのデータで、追跡期間は2.7年(2万4937人-年)だった。

 IMPROVE-IT試験は、急性冠症候群患者を対象にエゼチミブ10mg/日+シンバスタチン40mg/日をシンバスタチン40mg/日と比較するもの。2005年末に登録を開始し、現在も登録は継続している。2008年7月の時点でデータが利用できた患者は1万1353人(1万1564人-年)で、追跡期間の中央値は1.0年だった。

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