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NEJM誌から
治癒可能胃癌では大動脈周囲リンパ節郭清は不要
日本国内の24病院で実施した無作為化試験の結果より

 病期がT2、T3、T4の腫瘍には、胃切除とD2リンパ節郭清が標準適用されるが、さらに大動脈周囲リンパ節郭清PAND)を行う術式も適用されている。しかし、生存期間延長が可能かどうかについては議論があった。国立がんセンター中央病院の笹子三津留氏らは、日本で無作為化試験を行い、PANDを併用しても生存利益は見られないことを明らかにした。詳細は、NEJM誌2008年7月31日号に報告された。

 著者らによると、胃癌患者に対するPANDの生存利益を調べる大規模前向き研究はこれまで行われていなかった。そこで、治癒可能な胃癌と診断され、胃切除を受ける患者を対象に、D2郭清のみとD2郭清とPANDの併用を比較する無作為化試験を、日本国内の24病院で実施した。

 すべての手術は、十分な経験を持つ外科医または施設で行われており、技術的な差が小さい環境になるようにした。中間解析の結果は、比較の対象となっている術式の間に、短期的な重症合併症の発生、院内死亡の発生の頻度に差がないことを示した。

 1995年7月から2001年4月までの間に、病期がT2b、T3、T4の75歳未満の胃腺癌の患者523人を登録。大動脈周囲に大きな転移が見られず、腹腔洗浄液の細胞診の結果が陰性など、組み込み基準を満たすことが確認された患者について、術中に、外科医がどちらのグループに割り付けるかを電話で確認し、D2郭清のみ実施(263人)またはPANDを追加適用(260人)した。再発が見られるまで、術後補助療法は適用しなかった。

 主要エンドポイントは全生存率に設定し、分析はintention-to-treatで行った。Kaplan-Meier法を用いて生存曲線を作成し、ログランク検定により比較。ベースラインの患者特性で調整してCox回帰分析によりハザード比を求めた。両群のベースラインの患者特性は同等だった。

 PAND併用群では、手術に要した時間の中央値は300分で、D2郭清のみ群より63分長く(P<0.001)、失血量の中央値は660mLでD2郭清群より230mL多かった(P<0.001)。輸血もPAND併用群で適用頻度が高かった(30.0%と14.1%、P<0.001)。

 手術関連の合併症は、D2郭清群が20.9%、PAND併用群は28.1%(P=0.07)で差はなかった。重症の合併症である吻合部縫合不全(2.3%と1.9%)、膵液瘻(5.3%と6.2%)、腹腔内膿瘍(5.3%と5.8%)、肺炎(4.6%と1.5%)についても、すべて有意差は見られなかった。

 術後30日以内の全死因死亡(両群共に0.8%)にも差はなかった。ただし、より軽度の合併症(イレウス、リンパ漏、左側胸水、重症下痢など)は、PAND併用群で有意に多かった(9.1%と20.0%、P<0.001)。

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