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NEJM誌から
低体温療法は小児の重症外傷性脳損傷には無効
低体温療法で死亡リスク上昇の懸念も

 小児の重症外傷性脳損傷に対する低体温療法の効果を明らかにするため、低体温療法の適用の有無によって、6カ月後の神経学的転帰に差があるかどうかを調べる無作為化試験の結果、低体温療法には効果がない上、死亡率の上昇傾向が見られることが明らかになった。カナダSick Children病院のJames S. Hutchison氏らの報告で、詳細はNEJM誌2008年6月5日号に報告された。

 低体温療法は、外傷性脳損傷モデルの生存率と神経学的転帰を向上させることが示されていた。また18人の小児患者を対象とした試験は、低体温療法が外傷性脳損傷の小児患者に利益をもたらすことを示唆した。一方、その後に行われた2件の無作為化試験では、低体温療法の安全性は示されたが、生存または神経学的転帰には影響は認められなかった。

 著者らは、小児を対象とする国際的多施設試験を実施した。1~17歳の重症の外傷性脳損傷患者(外傷発生地点で、または、救急部門でGlasgow Coma Scaleが8以下、CTで急性脳損傷が確認され、人工呼吸が必要な患者)に、外傷発生から8時間以内に低体温療法を開始、または標準体温(37℃)維持を適用することにした。低体温療法群には、体表冷却により24時間後まで食道温度32.5度を維持し、その後復温(2時間に0.5度の体温上昇)、37度±0.5度を維持する方法を適用した。

 1999年2月から2004年10月までに条件を満たした225人を登録、低体温療法(108人、平均年齢9.8歳)と標準体温維持(117人、平均年齢10.2歳)に割り付けた。

 主要アウトカム評価指標は、6カ月時にPediatric Cerebral Performance Category(PCPC)スコアに基づいて評価した予後不良患者(重度障害、遷延性植物状態、死亡)の割合とした。PCPCは6ポイントからなり、正常がスコア1、軽度障害は2、中等度障害は3、重度障害が4、遷延性植物状態が5、死亡は6となる。

 さらに血圧、頭蓋内圧、同時に用いられた治療、ICU在室期間、入院期間、有害事象(低血圧、感染、出血、不整脈、電解質異常)も記録、両群間で比較した。

 低体温群の24時間の平均体温は33.1±0.5度、標準体温群は36.9±0.5度だった。低体温療法群では、冷却開始から平均3.9時間で目標とする体温となった。24時間後に復温を開始し、終了は18.8時間後だった。

 頭蓋内圧は、当初24時間は低体温群の方が標準体温群より低く、復温期には標準体温群より高かった。16時間(P=0.02)と24時間(P=0.01)、48時間(P=0.01)、72時間(P=0.03)の時点で差は有意だった。

 復温期には標準体温群に比べ低血圧症の発生率が高く(P=0.047)、25~72時間に血管作動薬(ドーパミン、エピネフリン、ノルエピネフリン)の投与を受けた患者が有意に多かった(85%と56%、P<0.001)。

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