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大人も空気がきれいな場所に転居すれば肺機能を維持できる
環境中の粒子状物質の低減対策の必要性を示唆

 健康被害をもたらす大気汚染、特に粒子汚染の環境から、空気がきれいな環境への転居は、肺機能への害を弱めることが小児を対象とした研究で示されているが、成人についても同様の効果が得られるのだろうか。スイスBasel大学のSara H. Downs氏らは、平均年齢41歳の成人を11年間追跡し、環境に存在する粒径10μm未満の粒子状物質(PM10)が減少すれば加齢による肺機能低下は緩やかになることを示した。詳細はNEJM誌2007年12月6日号に報告された。

 これまでに、粒径2.5μm未満の浮遊粒子状物質への曝露を減らすと、全死因死亡、心血管死亡、肺癌による死亡が減少するという報告があったが、粒子状物質に対する曝露の減少が肺機能にどのような影響を及ぼすかは、明らかではなかった。

 一方、肺機能は加齢により低下するが、喫煙や粉塵曝露はそれを加速する。大気汚染も同様に影響すると考えた著者らは、PM10の曝露の変化と加齢による肺機能低下の関係を調べる前向き研究を実施した。1990年にスイス各地の住民登録から無作為に選んだ18~60歳の成人9651人を対象に、1991年と2002年に評価を実施した。

 登録者が自宅屋外でPM10に曝露する量を推算、肺容量と流量(努力性肺活量:FVC、1秒量;FEV1、1秒率:FEV1/FVC、最大呼気中間流量:FEF25-75%)を測定し、喫煙その他の危険因子や交絡因子候補について調査した。

 1991年と2002年にすべてのデータが得られていたのは4742人だった。住居の屋外でのPM10曝露の合計は11年間で減少、中央値は-5.3μg/立方メートル(四分位範囲-7.5から-4.2)だった。減少が大きかったのは都市部で、最も少なかったのはアルプス地域。11年間の累積曝露量の平均は238μg/立方メートル-年(四分位範囲197-287)だった。11年の間に、職場での埃や煙の曝露や受動喫煙が減少、現在の喫煙者も減少していた。

 ベースラインのPM10濃度や年齢、性別、自身の喫煙、親の喫煙、職場での煤煙や粉塵の曝露、といった交絡因子で調整し、混合モデル回帰分析を実施。PM10の減少と有意な関係が見られたのは、EFV1(p=0.045)、1秒率(p=0.02)、FEF25-75(p=0.001)の低下率で、肺機能低下は緩やかになっていた。

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