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Lancet誌から
輸血関連急性肺損傷の予防に制限的輸血戦略が有効
過去約30年間に報告された文献のレビューの結果

 輸血のまれな合併症と考えられていた輸血関連急性肺損傷TRALI)は、この約10年間の研究の進展により、輸血関連死亡の主な原因と見なされるようになっている。オランダAmsterdam大学医療センターのAlexander P J Viaar氏らは、TRALIの発生機序、罹患率、危険因子、臨床像、治療法、予防策などの情報をまとめ、Lancet誌2013年9月14日号に報告した。

 今回報告されたのは、PubMedに1980~2012年に登録されたTRALIに関する文献のレビューだ。

 TRALIの国際的な定義は、04年に米国立心肺血液研究所などにより確立された。「疑い例」は、「輸血から6時間以内の急性肺障害で、他に危険因子が見つからない患者」と定義されている。しかし、他の原因、例えば敗血症や肺挫傷による急性肺損傷との区別は難しい。そこで、他の危険因子を保有する患者を「可能性例」と見なすことになっている。

 TRALIの発症機序の詳細は明らかではないが、以下のような2段階を経て発症すると考えられている。第1段階は、初回抗原刺激を受けた好中球の肺内皮への接着と、これによるサイトカインの分泌亢進からなり、第2段階では輸血された血漿中に存在するメディエーターなどにより、内皮細胞と好中球の活性化が生じ、毛細血管からの漏出と、これに続く肺浮腫を引き起こす。

 第2段階は、抗体仲介性、または抗体非仲介性に進行する。抗体仲介性の反応には、輸血によって体内に入るHLA(ヒト白血球抗原)、HNA(ヒト好中球抗原)や、レシピエントのHLA、HNAを認識するドナー由来の抗体が関与する。一方、抗体非仲介性の反応は、血液製剤保管中に蓄積された炎症誘発性のメディエーターや生理活性脂質、老化した血液細胞などによって生じる可能性がある。

 TRALI罹患率は輸血を受けた患者の0.08~15%と報告されている。臨床症状が様々で、疾病マーカーや診断検査がないこと、04年まで明瞭な定義がなかったことが、罹患率のばらつきが大きい原因と考えられる。ICUに入院している重体の患者の罹患率は、一般の入院患者の50~100倍になるとの報告もある。

 死亡率はおおよそ5~10%程度で、予後は一般に良好といわれるが、転帰に関するデータは十分に報告されていない。

 臨床所見は、肺血管の透過性上昇の結果として生じる呼吸困難、頻呼吸、低酸素血症などの呼吸器症状が中心で、肺浮腫に至る。呼吸困難は輸血から2~3時間以内に発生することが多い。胸部X線検査で肺が真っ白に見える(ホワイトアウト)患者が多いが、全ての症例のX線画像に異常が見られるわけではないなど、症状は多様だ。TRALI特異的な検査値異常は見つかっていないが、一過性の白血球減少症が比較的多くの患者で見られる。

 重症度も様々で、呼吸機能の低下は、酸素補充療法による管理が可能なレベルから致死的なレベルまで幅広い。70~90%の患者が機械的換気を必要とする。

 生命を脅かす重症TRALIへの治療法は確立されておらず、治療は支持療法となる。

 支持療法としては、1回換気量を制限する換気設定は有用と考えられる。TRALIは輸血を原因とする急性肺障害/急性呼吸窮迫症候群ALI/ARDS)と見なされるためだ。また、利尿薬や輸液の制限も有効と見られている。一方、ステロイドの投与を支持するエビデンスはない。動物実験ではアスピリンの有効性が示されているが、ヒトへの作用は明らかではない。

機械的換気、敗血症などが患者側のリスク因子
 ICU入院患者を対象とする分析では、輸血関連、すなわち血液製剤に関連する危険因子より、患者が保有する危険因子の方がTRALI発症への寄与が大きいことが示されている。したがって、患者ごとにリスクを低減するためのアプローチを用いることが大切だ。

 過去5年間に発症にかかわる患者側の危険因子の同定が進んだ。機械的換気を受けている患者、特にピーク気道内圧が高く設定されている患者がTRALIを起こしやすい。特定の手術や敗血症、複数回の輸血が必要になる疾患の存在、過剰輸液による水分過負荷なども危険因子と見なされている。
 

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