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Lancet誌から
アスピリンの常用は腺癌の転移を抑制する
心血管イベントを評価した5件の無作為化試験を分析

 アスピリンの使用が、固形癌の転移リスクを下げることが、英国で行われた5件の大規模無作為化試験データ分析で明らかになった。さらに分析すると、アスピリンによる癌転移リスク低減効果は腺癌でのみ有意だった。英Oxford大学のPeter M Rothwell氏らが、Lancet誌電子版に2012年3月21日に報告した。

 著者らは以前、低用量アスピリンの常用が一部の癌の罹患率と死亡率を下げることを報告している。アスピリンによる癌死亡リスク低減は、アスピリンの使用開始から2~3年という短期間でも見られている。癌死亡率の低下がアスピリンによる癌の発生予防によるものならば、効果が現れるまでにもっと長い時間を要するはずだ。そこで著者らは、アスピリンは癌の転移も予防するのではないかと考えた。動物実験では、血小板が癌の血行性転移に重要な役割を果たすこと、その機序をアスピリンが阻害することが示されている。また、ヒトを対象とする観察研究では、アスピリンが特定の腺癌の遠隔転移と再発のリスクを低下させる可能性が示されていた。

 そこで、無作為化試験に登録され、アスピリンを毎日服用した介入群と、アスピリンを服用しなかった対照群について、追跡期間中の癌罹患、癌診断時の遠隔転移の有無、その後の遠隔転移の発生を調べることにした。

 アスピリンの血管イベント予防効果を評価するために英国で行われた5件の大規模な無作為化試験(BDAT、UK-TIA、TPT、POPADAD、AAA)に登録され、アスピリン(75mg以上/日:介入群)またはアスピリン服用なし(対照群)に割り付けられた人々の癌罹患に関する情報を得た。追跡期間中の癌診断に基づいて固形癌罹患者を同定し、さらに腺癌とそれ以外の癌に分類した。また、癌診断時または追跡期間中の転移に関する情報に基づいて、患者を(1)血行性転移(遠隔転移)確定(2)部位不明だが転移あり(3)追跡終了まで遠隔転移なし(4)不明、の4群に分けた。

 5件の試験の平均追跡期間は6.5年で、登録された1万7285人を追跡中に、あらゆる癌の罹患者は1101人になった。あらゆる癌による死亡は563人だった。アスピリンはあらゆる癌の新規罹患を12%減らし(オッズ比0.88、95%信頼区間0.78-0.99、P=0.04)、癌死亡を23%減らしていた(0.77、0.65-0.91、P=0.002)。

 あらゆる癌罹患者のうち、94人は血液癌で、20人は原発性の脳腫瘍だった。これらを除いた987人の固形癌患者について、転移の有無を調べた。遠隔転移確定例は210人(27%)、部位不明だが転移ありが183人(24%)、癌診断時または追跡期間中の遠隔転移なしが382人(49%)、不明が212人(21%)だった。遠隔転移確定例210人のうち92人が介入群、118人が対照群で、それぞれの中で52人と76人が腺癌患者だった。転移に関する分析は、転移確定例の210人を対象に行った。

 アスピリンへの割り付けは、試験期間中に固形癌の遠隔転移が発見されるリスクを減らしていた。ハザード比は0.64(95%信頼区間0.48-0.84、P=0.001)。

 腺癌については、介入群の遠隔転移のハザード比は0.54(0.38-0.77、P=0.0007)になったが、その他の固形癌では0.82(0.53-1.28、P=0.38)で、差は有意ではなかった。介入群と対照群の割り付けから腺癌診断までの時間には差はなかった(P=0.74)。また、腺癌患者のうち、転移はなく限局性の病変のみが見つかった患者は、介入群が122人、対照群は86人で、ハザード比は1.24(0.94-1.63、P=0.14)となり、アスピリンの利益は見られなかった。

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