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Lancet誌から
冠疾患発症にIL-6受容体を介した炎症が関係
受容体の多型によって冠疾患危険因子や炎症マーカーが減少

 インターロイキン-6受容体IL-6R)を介した炎症誘導が冠動脈疾患のリスクを上昇させることを示唆する、2件の大規模なメタ分析の結果が、Lancet誌電子版に2012年3月14日に掲載された。

 冠動脈疾患のリスクはアテローム性動脈硬化の進行と共に高まる。アテローム性動脈硬化と炎症の関係について調べる研究は様々に行われ、動脈硬化の指標となる炎症のマーカーは複数同定されている。しかし、遺伝学的な研究では、それら炎症マーカーと冠動脈疾患の間には相関関係があるだけで、因果関係はないことが示唆されており、動脈硬化を引き起こす炎症関連分子の同定が待たれていた。

 そして今回、国際的な協力によって、IL-6Rが関与する炎症反応のシグナル伝達が、冠動脈疾患発症に役割を果たすことが示された。さらに、IL-6Rに対するモノクローナル抗体であるトシリズマブを投与された患者の冠動脈疾患危険因子を分析したところ、対照群に比べ有意に低いことも分かった。

IL-6Rの遺伝的変異で炎症誘発能が低下した人は冠動脈疾患リスクも低い
 1本目の論文は、国際コンソーシアムである「IL6R Genetics Consortium and Emerging Risk Factors Collaboration」によるもの。研究者たちは、82件の研究を対象とする共同メタ分析を行い、遺伝的な変異によりIL-6Rの炎症誘発能が低下している人々は、冠動脈疾患リスクも低いことを示した。

 著者らは、IL-6Rを介したシグナル伝達が冠動脈疾患の原因の一つであるかどうかを明らかにするために、IL-6のシグナル伝達が抑制されるIL-6Rの変異に注目した。IL-6Rの変異のうち、アミノ酸の置換が生じたために膜結合型IL-6Rの発現量が低下し、受容体を介したシグナル伝達が抑制されて炎症反応が低下することが知られているAsp358Ala変異と、既知の冠動脈疾患危険因子、および炎症のバイオマーカーとの関係を調べた。対象には12万5222人の心血管疾患歴のない人々を選んだ。

 Asp358Alaの変異の存在は、血中脂質量、血圧、肥満、血糖異常、喫煙とは無関係だった。この変異を保有していない人に比べ、変異を1コピー保有する人々の血液中に存在する可溶性IL-6Rの平均濃度は34.3%(95%信頼区間30.4-38.2%)高く、IL-6濃度は14.6%(10.7-18.4%)高く、CRP濃度は7.5%(5.9-9.1%)低く、フィブリノゲンは1.0%(0.7-1.3%)低かった。さらに1コピー保有当たり冠動脈疾患リスクは3.4%(1.8-5.0%)低かった。

 Asp358Alaの炎症マーカーなどへの影響を、IL-6R抗体医薬であるトシリズマブの投与を受けた関節リウマチまたはクローン病の患者(4394人)で検討したところ、トシリズマブも、血中IL-6R量、IL-6量、CRP、フィブリノゲン値に対してAsp358Alaと同様の影響を及ぼすことが明らかになった。ただしトシリズマブ投与群では、投与前に比べて総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、トリグリセリドの上昇も認められた。

トシリズマブを投与した関節リウマチ患者にも同様の影響
 2本目の論文は、国際コンソーシアム「IL6R Mendelian Randomisation Analysis Consortium」によるもの。研究者たちは、メンデル無作為化解析を適用し、40件の試験に登録された欧州系の13万3449人を分析し、冠動脈疾患の一次予防を目的としてIL-6R経路を阻害した場合の安全性と有効性を評価しようと考えた。

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