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Lancet誌から
リチウムは甲状腺や副甲状腺の機能異常のリスクを高める

 気分障害の治療薬として広く用いられているリチウム毒性について調べた系統的レビューとメタ分析の結果が、Lancet誌電子版に2012年1月20日に掲載された。英Oxford大学のRebecca F McKnight氏らによると、リチウムの使用は、尿濃縮能の低下、甲状腺機能低下副甲状腺機能亢進体重増加と関係していた。一方で、先天的な奇形、脱毛症、皮膚疾患リスクの有意な上昇は見られず、臨床的に意義のある腎機能の低下の報告はほとんどなかったという。

 リチウムは双極性障害の長期的な管理において最も有効な薬剤であることが示されている。その安全性については、特に腎機能に与える影響と催奇性に対する懸念が示されていたが、有害事象に関する信頼できるデータはなかった。そこで著者らは、リチウムの毒性プロファイルを明らかにするために、無作為化試験と観察研究を対象として系統的レビューとメタ分析を行った。

 MedlineやEmbaseなどの文献データベース、専門誌、参照文献リスト、気分障害に関する主な教科書、学会の抄録、リチウム販売会社が保有するデータなどから、気分障害(うつ病または双極性障害)でリチウムを投与された患者に認められた有害事象について報告している無作為化試験、コホート研究、ケースコントロール研究、症例報告を選び、情報を抽出した。

 主要評価指標は、腎機能(糸球体濾過量〔GFR〕90mL/分超、最大尿濃縮能800~1200mOsm/kgを正常とする)、甲状腺機能(甲状腺刺激ホルモン〔TSH〕値0.5~5.7 IU/mLを正常とし、TSH上昇かつチロキシン低下を臨床的な甲状腺機能低下、TSH低下かつチロキシン上昇を甲状腺機能亢進とする)、副甲状腺機能(総カルシウム濃度2.1~2.8mmol/L、副甲状腺ホルモン値10~70pg/mLを正常とする)、体重の変化(7%を超える変化を臨床的に意義があると判定)、皮膚疾患、毛髪の疾患、催奇性(子宮内でリチウムに曝露した小児の主要な先天奇形と心奇形)に設定した。

 条件を満たした385件の研究を分析した。系統的レビューは1件で、無作為化試験が22件だった。ケースコントロール研究、コントロールなしのコホート研究、横断的研究が多く、197件になった。症例報告も166件あった。個々のアウトカムのエビデンスの質にはばらつきがあり、質の高いエビデンスはわずかだった。

 腎機能について報告していた研究は30件あった。ケースコントロール研究6件のデータをメタ分析したところ、GFRはリチウム使用群で低下傾向を示した(-6.22mL/分、95%信頼区間-14.95から2.20mL/分、P=0.148)。尿濃縮能については、4件のケースコントロール研究のデータの分析の結果、リチウム群における低下は有意で、加重平均差は-158.43mOsm/kg(-229.78から-87.07mOsm/kg、P<0.0001)となった。

 臨床的に最も重要と考えられる、腎不全に関する報告は少なかった。1件のコホート研究が、リチウムによる腎不全リスク上昇を示唆していたが、腎代替療法を受けていたのはリチウム使用者3369人中18人(0.5%)で、スウェーデンの一般国民における腎代替療法適用者の割合(0.2%)と比較して絶対リスク上昇は小さいと考えられた。

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