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Lancet誌から
自己心臓幹細胞移植で梗塞後重症心不全患者の左室機能が向上
フェーズ1 SCIPIO試験16人の分析結果

 慢性的な虚血性心筋症に起因する重症の心不全を呈する患者を対象に、冠動脈バイパス術(CABG)時に心組織約1gを採取して心臓幹細胞を分離培養し、冠動脈に注入する世界初のフェーズ1試験が行われた。米Louisville大学のRoberto Bolli氏らによると、移植により左室機能やQOLの有意な改善と梗塞部位の縮小などが確認されたという。論文は、Lancet誌電子版に2011年11月14日に掲載された。

 心筋梗塞によって機能が失われた心筋の再生に、幹細胞を用いる試みに注目が集まっている。急性心筋梗塞後に患者自身の骨髄幹細胞を移植して心機能の回復を図る研究はこれまでにも複数行われているが、慢性化した虚血性心筋症に由来する心不全の患者に幹細胞治療を行った研究はほとんどなく、さらに、患者自身から採取し培養した心臓幹細胞を、ヒトに治療適用する研究はこれまで行われていなかった。

 著者らは、成人の心臓に存在する、C-kitを発現し、様々な分化マーカーは陰性の幹細胞に注目した。それらの細胞は、心筋細胞、血管平滑筋細胞、血管内皮細胞の全てに分化する能力を持つことが知られている。

 動物実験では、C-kit陽性でlineage陰性(分化した細胞に特徴的な抗原を持たない)の心臓幹細胞が心筋梗塞後の左室機能不全を改善できることが示されていた。この結果に基づき、今回のSCIPIO試験がフェーズ1試験として設計され、慢性化した虚血性心筋症に由来する重症心不全患者でCABGを受ける人々を対象に選んだ。75歳未満で、左室駆出率(LVEF)が40%以下、心筋に瘢痕組織が認められる患者を登録し、CABGから3~4カ月後に同じ基準を用いて再評価した上で、組み入れる患者を選抜した。

 試験は09年2月に始まり、09年3月13日に最初の患者を登録、09年7月17日に最初の心臓幹細胞移植を行った。11年4月1日までに81人中80人について心臓幹細胞の採取と分離、培養に成功している。この試験は現在も進行中で、今回は当初に治療を受けた16人に関する分析結果が報告された。

 SCIPIO試験のステージAは、短期的な安全性の確認を目的に行われた。条件を満たす患者を連続的に登録して、最初の9人を介入群に、その後の4人を観察のみの対照群に割り付けた。ステージBでは、無作為割り付けを実施した。介入群と対照群が2対3になるよう、登録患者を無作為に割り付けた。

 CABG時に右房の組織約1gを採取して心臓幹細胞を分離培養した。投与する心臓幹細胞の数は梗塞部の数と位置に基づいて決定した。バルーンカテーテルを冠動脈に挿入、梗塞部位近傍まで進めて、バルーンをふくらませた状態で幹細胞を注入した。対照群にはカテーテルの挿入自体を行わなかったため、試験はオープンラベルで行われたが、心エコー結果の分析時には分析者を盲検化した。

 心エコー検査とNYHA分類に基づく心不全の重症度評価を、幹細胞移植の前、1カ月後、4カ月後、それ以降12カ月ごとに実施。ミネソタ心不全QOL質問票(MLHFQ)を用いた評価も、移植前、4カ月後とそれ以降12カ月ごとに実施した。禁忌でない患者にはMRI検査も同様の間隔で行った。

 主要エンドポイントは短期的な安全性、2次エンドポイントは有効性に設定した。分析はper-protocolで行った。

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