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Lancet Oncology誌から
携帯電話の発癌リスク、エビデンスは限定的
「グループ2B」に分類したIARCの研究者らによる報告

 WHOの外部組織であるフランスの国際癌研究機関(IARC)は先頃、携帯電話使用と脳腫瘍の関係を調べた研究で得られた限定的なエビデンスに基づいて、無線周波電磁界(RF-EMF)曝露の発癌リスクをIARCの発癌性分類のグループ2B(Possibly carcinogenic to humans:人に対して発癌性がある可能性がある)に分類した。その経緯の概要を、IARCのRobert Baan氏らがLancet Oncology誌2011年7月号に発表した。

 2011年5月、14カ国から30人の科学者たちがIARCに集まり、RF-EMF(周波数30kHz~300GHz)の発癌性を評価した。携帯電話以外の職業的なRF-EMF曝露などについても幅広く検討を進めた結果、携帯電話については癌との関係を示したエビデンスは限定的で、それ以外のRF-EMFと癌の関係については、現時点では十分な情報はないとの判断を、ワーキンググループのメンバーは下した。

 RF-EMFへの曝露が発生する人々は、携帯電話、コードレスフォン、Bluetooth機器、アマチュア無線機器などを使用する個人(個人曝露)、高周波の誘導加熱器や誘電加熱器、パルスレーダー装置を使用する職場で働く人々(職業曝露)、携帯電話基地局、放送アンテナ、医療機器などに近寄った人々(環境曝露)の3グループに分類できる。

 個人曝露の場合は、携帯電話のような発生源を体のすぐ近くで使用するため、職業曝露と環境曝露に比べて曝露レベルは高くなりがちだ。個人曝露の場合には、曝露部位も限定される。

 モバイル機器の中では、モバイル通信用グローバルシステム(GSM)ハンドセットが発する電磁エネルギーが強いことは知られている。GSMは、世界的に第2世代(2G)携帯電話に使用された通信方式だが、日本と韓国では採用されなかった。第3世代(3G)携帯電話には採用されなかったものの、端末が安価であること、改良が進んだことから、いまだ世界では広く使用されている。鉄塔や屋根の上に設置された携帯電話基地局や、テレビ、ラジオの放送アンテナから発せられるRF-EMFに比べGSMのエネルギーは桁違いに大きい。3G携帯と比較すると、GSMのエネルギーは最大で100倍にもなる。なお、Bluetoothハンズフリー機器の場合には、RFエネルギーの出力パワーは携帯電話の100分の1程度といわれている。

 携帯電話を使った音声通話を行った場合に脳に吸収される電波のエネルギー量は、携帯電話のデザインや持ち方、基地局と端末の通信の種類などによって変化する。小児が携帯電話を使用した場合には、脳の電磁界エネルギーの吸収は成人の約2倍、頭骨骨髄での吸収は約10倍との報告がある。一方、ハンズフリーキットを使用すると、脳の曝露レベルは端末を耳に当てる場合の10%以下になる。

 癌とRF-EMFの関係を示す疫学的なエビデンスはこれまで、主に携帯電話とコードレスフォンの影響に焦点を当てて収集されてきた。今回ワーキンググループは、それらのうち、神経膠腫との関係を分析していたコホート研究とケースコントロール研究について分析した。

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