日経メディカルのロゴ画像

Lancet誌から
アスピリンは癌、特に消化器癌の死亡リスクを下げる

 75mg以上のアスピリンを毎日服用することにより、死亡、特に消化器癌による死亡のリスクが有意に低下すること、その利益は使用開始から5年を過ぎると明らかになることが、英Oxford大学のPeter Rothwell氏らが行ったメタ分析で明らかになった。論文は、Lancet誌電子版に2010年12月7日に掲載された。

 先進国では、癌の生涯リスクは約40%といわれている。癌の治療技術は進歩しているが、予防薬の研究は遅々として進まない。アスピリンについては、長期的な使用が一部の癌、特に消化器癌のリスクを低減する可能性が報告されていたが、人を対象とする研究では明確な結果は得られていなかった。

 著者らは先に、無作為化試験に登録された患者の追跡データを分析し、アスピリンを5年以上にわたって毎日服用すると大腸癌の罹患と死亡のリスクが低下することを明らかにした(Lancet誌2010年10月22日号に報告、関連記事)。続いて今回は、さまざまな癌による死亡にアスピリンが及ぼす影響を調べた。

 血管イベントの一次予防または二次予防におけるアスピリン常用の有効性と安全性を評価した無作為化試験の中から、計画された投与期間が4年以上だった研究8件を選んだ。適用されたアスピリンの用量は75mg/日から1200mg/日まで幅広く、対照群には、偽薬または他の抗凝固薬、もしくはそれ以外の抗血栓薬が投与されていた。

 以下、分析はintention-to-treatで行った。

 選出された8件の研究は、計2万5570人の患者を登録しており、うち674人が癌で死亡していた。報告されていたデータをメタ分析したところ、アスピリンへの割り付けは試験期間中の癌死亡を有意に減らしていた。プールしたオッズ比は0.79(95%信頼区間0.68-0.92、P=0.003)。アスピリンの用量が75~100mg/日だった試験のデータに限定すると、オッズ比は0.81(0.68-0.97、P=0.03)になった。

 癌死亡の減少はアスピリン群の全死因死亡も有意に減らしていた。オッズ比は0.92(0.85-1.00、P=0.047)。アスピリン群の癌以外の原因による死亡リスクは対照群と同様だった(オッズ比0.98、0.89-1.07、P=0.63)。

 個々の患者の生存期間に関するデータが得られた7件の試験(2万3535人の患者、癌死亡は657人)を対象に、Kaplan-Meier法を用いて癌による累積死亡率を推定したところ、アスピリン群の癌死亡のハザード比は0.82(0.70-0.95、P=0.01)になった。

 アスピリンの利益は割り付けから5年以上経過すると明らかになった。すべての癌についてのハザード比は0.66(0.50-0.87、P=0.003)。5年未満の場合は0.86(0.71-1.04、P=0.11)。

 癌の原発部位を知ることができた6件の研究(1万9824人の患者、癌死亡は627人)のデータを分析したところ、消化器癌のハザード比は、割り付けから5年以上追跡された患者群で0.46(0.27-0.77、P=0.003)、5年未満の追跡では0.96(0.67-1.38、P=0.81)となった。非消化器系の固形癌は、5年以上追跡してもハザード比は0.76(0.54-1.08、P=0.12)で、リスク低下は有意にならなかった。

この記事を読んでいる人におすすめ