軟性S状結腸鏡検査を55歳から64歳までの間に1回受ければ、大腸癌の罹患率と死亡率を減らせるのではないか―。そう仮定した英London大学Imperial CollegeのWendy S Atkin氏らは、これを検証する無作為化試験を行い、スクリーニングを受けた人々では、そうでない人々に比べ、大腸癌罹患リスクは33%、大腸癌死亡リスクは43%低下することを示した。論文は、Lancet誌2010年5月8日号に掲載された。
大腸癌患者の生存は、診断時のステージに大きく左右される。これまでに行われた無作為化試験のデータは、隔年の便潜血検査が死亡率を約25%減らすことを示しており、多くの国でスクリーニングにこの検査が用いられている。
著者らは、(1)大腸癌と大腸腺腫の約3分の2は直腸とS状結腸に生じること、(2)この領域の検査には軟式S状結腸鏡が適していること、(3)検査は安全で迅速に実施でき、患者にとって十分に受け入れられるものであること、(4)この領域の癌、すなわち遠位大腸癌に先駆けて大腸腺腫が見られること―から、S状結腸鏡検査によって腺腫を発見、切除すれば、遠位大腸癌の発症が長期的に予防できるのではないか、と考えた。
そこで、主に遠位大腸癌に焦点を当てて、軟式S状結腸鏡を用いたスクリーニングの長期的な効果を調べる大規模な無作為化試験を実施した。
英国の14施設で、94年11月から99年3月まで、スクリーニングを受けても良いと回答した55~64歳の男女17万432人を登録。無作為に軟性S状結腸鏡を用いたスクリーニング(5万7237人)またはスクリーニングなし(11万3195人)に割り付けた。
スクリーニング群は、軟式S状結腸鏡検査とポリープ切除術を受けた。ポリープが病理学的にハイリスクと見なされたケースは結腸鏡検査施設に紹介した。
08年12月31日までの転居、癌発症、死亡などに関する情報はNHS中央登録(NHSCR)から得た。
主要アウトカム評価指標は、大腸癌罹患率(スクリーニングで発見された症例も含む)と大腸癌死亡率とした。intention-to-treat(スクリーニングに割り付けられた人々を介入群とする)と、per-protocol(介入群を、実際にスクリーニングを受けた人々と受けていない人々に分けて分析する)の両方を行った。
実際に軟性S状結腸鏡検査を受けていたのは、介入群の71%に当たる4万674人。うち3万8525人(95%)は、ポリープなし、または低リスクのポリープのみと診断された。残りの2131人(5%)が結腸鏡検査に紹介され、うち2051人が実際に検査を受け、1745人がさらに監視を受けることになった。
08年12月31日まで追跡。スクリーニングからの追跡期間の中央値は11.2年だった。
分析対象となったのは、条件を満たした介入群5万7099人、対照群11万2939人で、両群共に平均年齢は60歳だった。
新規に会員登録する
会員登録すると、記事全文がお読みいただけるようになるほか、ポイントプログラムにもご参加いただけます。