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Lancet誌から
欧州でも麻疹撲滅への道は険しい
ルーマニア、スイス、英国などで高い罹患率

 麻疹の予防対策が進んでいる欧州でも、いまだ麻疹撲滅には至らず、アウトブレイクが発生している。デンマークStatens Serum InstitutのMark Muscat氏らが、欧州における麻疹の詳細な疫学分析を行ったところ、罹患率やワクチンカバー率において目標達成にほど遠い国が少なからず存在するなど、麻疹撲滅に向けて多くの課題があることが明らかになった。詳細は、Lancet誌電子版に2009年1月7日に報告された。

 欧州では、20年以上前に麻疹ワクチンが小児定期予防接種プログラムに組み込まれたにもかかわらず、2006~07年に一部の国で麻疹感染が多発し、2008年もその状態が続いた。「2010年に欧州で麻疹を撲滅する」というWHOの目標を達成するためには、欧州各国の協調努力が欠かせない。著者らはまず、麻疹の疫学情報について詳細に検討し、撲滅に向けた対策を提案しようと考えた。

 EU加盟27カ国にクロアチア、アイスランド、ノルウェー、スイス、トルコを加えた32カ国では、国家麻疹サーベーランス機関が、ワクチンにより予防可能な疾患のための欧州サーベーランスネットワーク(EUVAC.NET)にデータを報告している。著者らは、このEUVAC.NETから2006~07年のデータを得た。

 30カ国は症例ベースのデータも提供していた。それらの国の罹患者については、発症日、年齢、診断方法、予防接種状況、輸入例かどうか、入院、合併症としての急性脳症の有無、死亡に関する情報が得られた。輸入例については推定感染国が示されていた。

 麻疹土着感染例は、輸入と報告されていない症例とし、輸入かどうかが不明の症例もここに含めた。

 各国のサーベーランスの基準を満たした臨床診断例、検査診断例、疫学的関連が認められた症例を分析対象とした。症例は年齢によって以下のように層別化した:1歳未満、1~4歳、5~9歳、10~14歳、15~19歳、20歳以上。

 2年間に麻疹患者の報告数は1万2132例あった。うち85%(1万329例)は、ルーマニア、ドイツ、英国、スイス、イタリアの症例だった。

 2006年に患者数が最も多かったのはルーマニアで、全体の39%を占めた。2番目がドイツで28%。粗の罹患率が最も高かったのはルーマニアで、10万人当たり14.8人、2番目がギリシャで4.7人だった。

 2007年には、欧州全体の粗の罹患率は06年に比べ有意に低下した(10万人当たり1.41から0.67、p<0.001)。07年にはスイスと英国の患者数が突出してしており、それぞれ全体の27%と26%を占めた。粗の罹患率はスイスが13.9と最高値を示した。

 2006~07年の土着感染の罹患率は、国ごとに異なっていた。土着感染なしと報告していたのはブルガリア、クロアチア、キプロス、フィンランド、ハンガリー、アイスランド、ポルトガル、スロバキア、スロベニアの9カ国。

 年齢が明らかだったのは、2006年の罹患者の99%(8121人)、2007年は98%(3845人)。年齢の分布は2006年と2007年で有意に異なっていた(p<0.0001)。2007年には5歳未満の感染者の減少が顕著で、特に1歳未満の罹患率が2006年の18.6(95%信頼区間17.5-19.6)から5.3(4.8-5.9)に減少していた。

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