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Lancet誌から
脳梗塞へのt-PA投与は発症後3~4.5時間でも有用
観察研究で頭蓋内出血や死亡の発生率に差なし

 脳梗塞の急性期治療では、血栓溶解薬である組織プラスミノーゲン活性化因子t-PA)の投与を「症状発現から3時間以内に限る」という厳しい時間枠がある。しかし、スウェーデンKarolinska研究所のNils Wahlgren氏らが行った観察研究の結果、発症から3~4.5時間の間にt-PAが投与された患者であっても、3時間以内に投与された患者と比べて、24時間以内の頭蓋内出血、3カ月時の死亡率、3カ月時の機能予後に有意差がないことが明らかになった。詳細は、Lancet誌電子版に2008年9月15日に報告された。

 これまでに、6件の無作為化試験を対象に行われたメタ分析では、症状発現からt-PA投与開始までの時間が長くなるにつれて、発症から3カ月時のアウトカムは低下するが、死亡のハザード比は270分(4.5時間)まで差がないことが示されている。

 そこで著者らは、t-PA(アルテプラーゼ)の投与が3時間以内に開始された患者と、3時間を超えて4.5時間までに開始された患者でアウトカムに差はないと仮定して、データベースから情報を抽出、分析した。

 著者らが利用したのは、Safe Implementation of Treatments in Stroke(SITS)という、35カ国の700施設を超える医療施設が脳卒中治療に関する情報を登録するインタラクティブなデータベース。このSITSの中で、基本的にはガイドラインに基づいて血栓溶解薬を投与された急性脳梗塞患者のデータが登録されるのが、SITS-International Stroke Thrombolysis Registry(ISTR)だ。著者らはここから情報を抽出した。

 SITS-ISTRには、SITS-MOST(欧州医薬品庁がアルテプラーゼ発売後に臨床転帰を監視するために要求した市販後調査)のデータが含まれる一方で、ガイドラインを完全に満たさない患者の情報も登録されている。

 分析対象となったのは、2002年12月25日から2007年11月15日に登録された患者で、脳梗塞を発症し、アルテプラーゼ(0.9mg/kg、最大用量90mg)の静注が発症から3~4.5時間に開始された664人と、3時間以内の投与開始が可能だった1万1865人。

 ベースライン(病院到着時)の患者特性と人口統計学的情報や、NIHSS(National Institute of Health stroke scale)による脳卒中の重症度(神経障害レベルを0~42で示す、0が正常)、症状発現時刻、危険因子、投薬情報、入院記録、追跡時の画像データなどを得た。

 この結果、3~4.5時間群では、3時間群に比べて症状発現から治療開始までに要した時間の中央値が55分遅かった(195分対140分、p<0.0001)。年齢の中央値は3歳若く(65歳対68歳、p<0.0001)、脳卒中の重症度は低かった(NIHSSスコアは11対12、p<0.0001)。また、高血圧既往者(55%対59%、p=0.02)と高脂血症既往者(30%対35%、p=0.03)の割合が少なかった。なお、脳卒中のサブタイプの頻度には差はなかった。

 3~4.5時間群の約60%が、181~200分(3時間を上回った時間が20分以内)に治療を受けていた。

 アウトカム評価指標は、24時間以内の症候性の頭蓋内出血(SITS-MOSTの定義による)と、3カ月時の死亡率、3カ月時の機能予後(modified Rankin scaleが0-2=良好)に設定。

 分析の結果、これらすべての指標において、両群間に有意な差が見られなかった。

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