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Lancet誌から
PCIセンター到着前の急性STEMI患者にチロフィバン投与が有効
PCI後のST偏位が改善し、30日後のアウトカムも良好

 急性のST上昇心筋梗塞STEMI)でプライマリPCIを受ける患者に、救急車内または紹介病院で糖蛋白IIb/IIIa受容体拮抗薬チロフィバンを投与することによりアウトカム向上が可能かどうか調べる無作為化試験の結果、プラセボ群に比べPCI後のST偏位が改善し、30日後のアウトカムも良好であることが示された。オランダIsala KliniekenのArnoud WJ van't Hof氏らの報告で、詳細はLancet誌2008年8月16日号に掲載された。

 STEMIの治療にPCIを適用する場合、血栓性合併症を予防するために血小板凝集を十分に抑制しなければならない。多くの研究がPCI開始直前の糖蛋白IIb/IIIa受容体拮抗薬の投与は有益であると報告している。しかし、病院到着前に投与される抗血小板薬(高用量クロピドグレルを含む)に加えて、糖蛋白IIb/IIIa受容体拮抗薬を用いた場合の利益は明らかではない。また、抗血小板薬と抗血栓薬を投与する最善のタイミングも示されていない。

 著者らは、糖蛋白IIb/IIIa受容体拮抗薬のチロフィバンを可能な限り早く投与すると、PCIを受ける患者のアウトカムが向上するかどうかを調べる無作為化試験を行った。

 二重盲検の前向き多施設試験は、オランダ、ドイツ、ベルギーの24医療機関で、2006年6月29日から2007年11月13日まで行われた。STEMIでPCI適用見込みの21~85歳の患者948人を登録。ST偏位が1mV超で、症状発現から30分超~24時間以内の患者とした。無作為に、チロフィバンの高用量ボーラス投与(25μg/kgをボーラス投与し、0.15μg/kg/分で18時間注入、491人)またはプラセボ(493人)に割り付けた。

 救急車内または専門施設に患者を紹介する病院(referral hospital)で、全員にアスピリン(500mg)、ヘパリン(5000IU)、クロピドグレル(600mg)を投与。同時にチロフィバンまたはプラセボの投与を開始した。

 PCI前、施行中、術後に、状態の悪い患者には離脱(bail-out)目的でチロフィバンをボーラス投与することを認めた。盲検化を維持するために、bail-out用チロフィバン(またはプラセボ)のバイアルを事前に提供してあった。ただし、使用された患者については、その後オープンラベルでチロフィバンの維持投与を実施した。

 主要エンドポイントは、PCI実施後1時間の時点のST偏位レベルに設定。上昇が3mm超の患者の割合を比較した。分析はintention-to-treatで行った。

 936人(95%)の患者が、救急車の車内または紹介病院で心筋梗塞と診断され、無作為割り付けを受けた。症状発現から診断までに要した時間の中央値は76分。救急車内で診断を受けた患者は75分で、紹介病院で診断を受けた48人(5%)については120分だった。チロフィバンまたはプラセボの投与開始から血管造影までは55分だった。

 PCIセンターでSREMIという診断が誤りだったと判明した患者は60人(6%)で、両群に均等に含まれていた。PCI前(投与開始からの時間の中央値は31分)に測定されたST上昇の平均値は、介入群10.9mm、プラセボ群12.1mm(P=0.028)。

 血管造影を受けた患者はチロフィバン群491人、プラセボ群493人で、完全閉塞(TIMI分類0度)は介入群443人中185人(41.8%)、プラセボ群456人中227人(49.8%)(P=0.013)と差は有意だった。TIMI分類3度の患者の割合は21.7%と19.5%で有意差はなかった。

 Bail-outチロフィバンが用いられた患者の割合は、介入群488人中97人(20%)、プラセボ群492人中140人(29%)(P=0.002)で、介入群で有意に少なかった。

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