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Lancet誌から
インフルワクチン接種は高齢者の市中肺炎リスクを低減せず
健康状態で調整して集団ベースで調査した結果

 インフルエンザ予防接種市中肺炎リスクの関係を分析した結果、ワクチン接種群に市中肺炎リスクの有意な低減は見られないという、従来の研究結果とは逆の結果が示された。米国Group Health Center for Health StudiesのMichael L Jackson氏らの報告で、詳細はLancet誌2008年8月2日号に掲載された。

 これまで、無作為化試験では、ワクチン接種による肺炎リスクの低減が示唆されている。しかし、その結果が様々な慢性疾患を抱えている一般の高齢者に、そのまま当てはまるとはいえない。このほか、観察研究の結果でも、ワクチン接種を受けた高齢者の肺炎による入院リスクが低いことが示されているものの、ワクチン接種を希望する高齢者とそうでない高齢者の健康状態には差があると予想される。さらに、軽症の肺炎患者の多くは入院治療を受けないため、外来患者も含めた研究が必要と考えられた。

 そこで著者らは、インフルエンザの予防接種が、正常な免疫機能を持つ高齢者の市中肺炎リスク低減をもたらすかどうかを、対象者の健康状態で詳細に調整して評価する、集団ベースのネステッドケースコントロール研究を実施した。対象は、HMO組織の一つであるGroup Healthの加入者で、地域で生活する免疫機能が正常な65~94歳の中から選出。そして2000年、2001年、2002年のインフルエンザ流行前(ワクチン接種開始から流行開始まで)と流行期(全米の監視データに基づいて流行期と判定された期間)に、市中肺炎と診断されたケースと、これらの患者にマッチするコントロールについて分析した。

 ケースは、インフルエンザワクチンの接種が開始された日から、その流行期の終了までに、市中肺炎で外来を受診または入院した患者。肺炎の診断は、医療記録または胸部X線写真により確認した。個々のケースに年齢と性別がマッチしたコントロールを2人ずつ選出。医療記録から、喫煙歴、肺疾患と心臓疾患の既往と重症度、虚弱性の指標など、交絡因子候補に関する情報を得た。

 交絡因子候補の疾患として、喘息、慢性閉塞性肺疾患、うっ血性心不全、認知症、脳卒中、アルコール依存症、糖尿病の存在と重症度を調べた。併存疾患の見落としを避けるために、過去2年間の処方記録も確認した。肺疾患については受診歴や検査結果などの情報も得た。身体機能の低下もワクチン接種や全死因死亡に関係するため、障害の有無とその程度を調べた。

 まず、条件付きロジスティック回帰分析により、個々の交絡因子候補と市中肺炎リスクの関係を調べて、交絡因子を同定。次に、流行前の期間について分析することで交絡因子の影響を完全に取り除けると考えられるモデルを構築し、ワクチン接種と肺炎リスクの関係を評価した。

 2000~2002年にGroup Healthに加入していた65~94歳計5万3929人のうち、条件を満たしたのは4万6824人(87%)だった。市中肺炎罹患が確認された1481人(37%)のうち、条件を満たした1173人をケースとし、コントロールを2346人選んだ。

 ケース1481人中、男性は597人(51%)で、外来患者は752人(64%)。447人(38%)が75歳未満、531人(45%)が75~84歳だった。

 コントロールで流行期終了までにワクチン接種を受けていたのは1838人(78%)。非接種者に比べ接種者に、肺疾患患者が多かった。しかし接種者も身体機能は良好で、肺疾患以外の併存疾患は少なかった。コントロールではケースに比べ、ワクチン接種と強力な関係を示す交絡因子が少なかった。

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