1日1回投与の基礎インスリン製剤グラルギンと、1日3回食事の直前に使用する超速効型インスリンのリスプロを直接比較する無作為化試験(APOLLO試験)の結果、両剤でHbA1c低下作用には差はないが、グラルギンの方が低血糖リスクが低く患者の満足度が高いことが示唆された。ドイツJustus-Liebig大学のReinhard G Bretzel氏らの報告で、詳細はLancet誌2008年3月29日号に報告された。
経口血糖降下薬の使用開始から数年のうちに、HbA1c値7%未満を維持できなくなる2型糖尿病患者は40~60%に上る。インスリンの追加が必要になるが、日々の自己注射や低血糖リスクに対する懸念が強く、使用開始に抵抗を感じる患者は少なくない。一方で、早期にインスリン治療を開始した方が予後は良いため、より良い選択肢を患者に提示することが求められている。
APOLLO試験は、経口血糖降下薬では血糖管理が適切に行えない成人の2型糖尿病患者を対象に、リスプロに対するグラルギンの非劣性の証明を試みた44週のオープンラベルの無作為化試験だ。
グラルギンは、中間型(NPH)インスリンと同等の血糖値管理が可能であると同時に、低血糖イベントが少ないことが示されている。一方、リスプロは、HbA1c値の改善という点でNPHインスリンに優り、低血糖イベント発生率はこれと同等と報告されている。
著者らは、経口血糖降下薬を使用している2型糖尿病患者を対象に、これらの効果と患者の満足度などを比較するAPOLLO試験を、欧州とオーストラリアの69施設で2003年6月25日~2005年5月31日に実施した。
2型糖尿病の診断から1年以上経過し、HbA1cが7.5~10.5%、α-グルコシダーゼ阻害薬以外の経口糖尿病治療薬を6カ月以上使用しており、空腹時血糖値は6.7mmol/L以上、BMIは35未満で、自己血糖測定を受け入れた18~75歳の患者418人の患者を登録。無作為にグラルギン(毎日同じ時間に使用、開始用量は10U 、205人)またはリスプロ(3回の食事の直前に使用、開始用量は1回4U、210人)に割り付けた。経口血糖降下薬(多くの患者がスルホニルウレア剤とメトホルミンを使用)の用量は、割り付け4週前から試験終了まで一定とした。
インスリンの用量はアルゴリズムを用いて調整。目標値は、グラルギン群は空腹時血糖値5.5mmol/L未満、リスプロ群は食後血糖値7.5mmol/L未満とした。
患者の満足度は、糖尿病治療満足度質問票(DTSQ)を用いて、割り付け4週前、介入開始から20週後、44週後に調べた。8項目について0~7ポイントで評価し、治療に対する満足度は6項目のポイントの合計で示した。
割り付けられた治療を1回以上受けた患者をintention-to-treat集団(グラルギン群204人、リスプロ群208人)、プロトコールからの逸脱が大きかった患者などを除いた377人をper-protocol集団(186人と191人)とした。
海外論文ピックアップ Lancet誌より
Lancet誌から
1日1回のグラルギンと1日3回のリスプロのHbA1c低下作用に有意差なし
APOLLO試験の結果から
2008/04/18
大西 淳子=医学ジャーナリスト
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