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空腹時血糖126mg/dLでは網膜症の有無を判別できず
126mg/dL以下でも7.4~13.4%の患者に網膜症あり

 空腹時血糖FPG)カットオフ値7.0mmol/Lでは、網膜症がある患者とない患者を正確に区別できないことが示唆された。オーストラリアMelbourne大学のTien Y Wong氏らの報告で、詳細はLancet誌2008年3月1日号に掲載された。

 世界保健機関(WHO)と米国糖尿病協会(ADA)の糖尿病診断基準は、FPG7.0mmol/L(126mg/dL)以上を糖尿病としている。この基準は、糖尿病に合併する細小血管症リスクが高い人と低い人を区別できる明確な血糖閾値がある、という仮定に基づいている。典型的な細小血管症が網膜症であり、糖尿病の合併症のうち、臨床的に、閾値でのリスクの判断が最もしやすいと考えられたことから、糖尿病の診断基準にFPG7.0mmol/Lが採用された。

 FPG7.0mmol/Lの根拠は、1994年以降に行われた3件の疫学研究が、網膜症の有病率はFPG7.0mmol/L以下では非常に低いが、これを超えると上昇することを示し、カットオフを7.0mmol/Lにすると、網膜症のある患者とない患者を高感度かつ高特異的に検出できるとされたためだ。

 著者らは、これら3件の疫学研究に用いられた網膜症の診断に問題があり、不正確だったと考えた。3件のうち1件は検眼鏡検査により、あとの2件は1回の眼底撮影により、網膜症か否かを判断していた。これらの方法で検査できるのは網膜の一部領域であり、網膜症の徴候を見落とす危険性があるからだ。

 また、FPGがカットオフ値以下であるのに網膜症の徴候が見られる患者が少なからずいるという報告も複数あり、カットオフ値設定の根拠に対する疑問が高まっていた。

 そこで著者らは、FPGと網膜症の関係に関する最新のデータを用いて、明確な血糖閾値が存在するかどうかを確認しようと考えた。分析の対象にしたのは、集団ベースのコホートを対象とする3件の研究のデータだ。

◆Blue Mountains Eye Study(BMES)
 49歳以上のオーストラリア住民3162人を対象に眼疾患について調べた研究で、コホート全体の8.0%(256人)が糖尿病患者。この試験では5年間の前向き追跡データも得られた
◆Australian Diabetes,Obesity and Lifestyle Study(AusDiab)
 25歳以上のオーストラリア人2182人を登録。糖尿病患者は33.6%(733人)
◆Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis(MESA)
 米国在住で民族的に異なる4集団に属する45~84歳の心血管疾患歴がない6079人が対象。糖尿病患者は12.8%(778人)

 いずれの研究も、両眼について複数領域の眼底撮影を行い、Airlie House Classification of Diabetic Retinopathy修正版に基づいて重症度を決定していた。さらに、Diabetic Retinopathy Disease Severity Scaleを用いて、より症状が重い中症の患者も同定した。

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